アラマタ図像館6 花蝶 ☆☆☆☆

(アラマタ図像館6 花蝶 / 荒俣 宏 / 小学館文庫 1999)

荒俣宏さんが、秘蔵の貴重な画集や資料を駆使して、様々なジャンルの色鮮やかな図像を紹介するとともに、図像学の薀蓄を傾けてくれる『アラマタ図像館』のシリーズ第6巻(最終巻)です。「怪物」「解剖」「海底」「庭園」「エジプト」と続いてきましたが、今回のテーマは「花蝶」。
とはいえ、どちらかと言えば花は脇役で、主要テーマは「蝶」――というか、蝶と蛾を中心とした昆虫類です。しかも、成虫だけではなく、卵から幼虫、サナギ、成虫まで至る変態の過程を1枚の絵の中で表現するという、至高の(笑)パターン。写真がなかった17~18世紀に、手彩色の原色図版で、現在の昆虫図鑑をはるかに凌駕する博物図像を堪能させてくれます。
収録されているのは、世界で初めて上記の変態プロセスを1枚に収録するテクニックを採用した「スリナム産昆虫の変態」(しかも、これを著したマリア・シビラ・メーリアンは、自ら熱帯のスリナムに渡った女性だというから、驚きです)、これに触発されるように刊行された「花蝶珍種図鑑」(著者ゲオルク・ディオニシウス・エーレトは植物画家ですが、蝶が描いてあるほうが売れ行きが伸びるという考えで、蝶の絵を描き加えたのだそうです)、英国最高の蝶類図譜と言われている「オーレリアン」(このタイトルの由来は、ギリシア語で“黄金のサナギの愛好者”という意味の言葉だそうです)の3冊。ほとんどの図版が本書に再録されています。
特に惹かれるのは、やはり「スリナム産昆虫の変態」で、描かれている虫のひとつひとつが大きいこと、熱帯地方の蝶よりも蛾が多く収録されていること、つまり蛾の幼虫である、はちきれんばかりにまるまると太ったイモムシが、たっぷりと描かれていることなど、ツボを突かれまくりです(こういうのって、別の意味で“変態”?(^^;)。
前半で、「花」は脇役で「蝶」が主役と書きましたが、両者が組み合わさって描かれてこそ、迫力のある生き生きとした図像になっているわけですし、植物と昆虫の切っても切れない関係を考えても、どちらが欠けても図版は“死んで”しまうでしょう。描かれている植物と昆虫類をすべて同定しようという荒俣さんの努力にも、頭が下がります。

オススメ度:☆☆☆☆

※ただし、この手の生き物が苦手な人は、手に取ってはいけません。念のため(^^;


アラマタ図像館〈6〉「花蝶」 (小学館文庫)
アラマタ図像館〈6〉「花蝶」 (小学館文庫)

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