自由未来 ☆☆☆

(自由未来 / ロバート・A・ハインライン / ハヤカワ文庫SF 1991)

ハインライン中期の長篇。
ネヴァダ州南部、マウントスプリングス近郊に住むファーナム家では、その夜もホームパーティーが開かれていました。典型的な“タフなアメリカの父親”で、土建業の社長をしているヒュー、アルコールに溺れがちな妻グレイス、長男で弁護士のデューク、長女の大学生カレン、カレンの友人でバツ1のバーバラのほか、忠実な黒人の使用人ジョーを含めて6人の男女がいました。しかし、ブリッジの勝負のさなか、ラジオが緊急警報を伝えてきます――国籍不明の飛行物体が飛来中、核ミサイルと思われる・・・。ソ連が先制核攻撃をかけてきたのです。実際家のデュークに「取り越し苦労だ」と馬鹿にされながら、ヒューが万一に備えて地下にこしらえておいた核シェルターに、6人(と、ネコのドック)は逃げ込みます。直後に衝撃が遅い、シェルターは何度も激しく揺さぶられます。
水タンクと換気口が破損し、高温に耐えかねた一同が、放射能被曝の危険を冒して地上に出てみると、そこに広がっていたのは焼き尽くされた大地ではなく、緑したたる自然豊かな風景でした。清らかな川が流れ、野生動物も豊富で、破壊の影さえありません。結局、バーバラが唱えた仮説――核爆発の衝撃で、シェルターごとパラレルワールドに吹き飛ばされた――を受け入れるしかありませんでした。
ヒューは、理屈ばかりで現状を直視しようとしないデュークに対し、銃で脅すことまでして、協力を誓わせます。未知の環境、文明が何もない極限状況で生き延びるためには、一致団結が必要だということからの苦肉の策でしたが、この対立は後々まで尾を引くことになります。それでも、ヒューは厳格なルールを設けて一家を統率し、サヴァイヴァル生活を少しでも快適なものにしようとします。植物学を専攻していたバーバラは畑を作り、アルコール依存から脱したように見えるグレイスも、単なるお荷物から労働力として数えられるまでになりました。そんな折、カレンとバーバラの妊娠が発覚します。カレンの相手は、元の世界で付き合っていた大学生ですが、バーバラの子どもの父親は、あの核爆発の一夜、はからずも結ばれたヒューでした(もちろん、他の家族には秘密ですが)。
しかし、ファーナム家が異世界で初めて迎えた出産は悲劇に終わります。その数日後、空から異様な飛行物体が舞い降りてきます・・・。
ここが、全編のほぼ中間点です。この後はネタバレになりますので、知りたくない方は読まないほうがいいかもしれません。







飛行物体から降りてきたのは、人間でした。かれらは黒人などの有色人種で構成され、未知の言語を使いましたが、ジョーが話す片言のフランス語は通じました。そして、“蛮人”と誤認されたファーナム家の一行は、不思議なフィールドに拘束されて護民官ポンスの館へと連行されます。そこで知ったのは、ここはパラレルワールドではなく、あの核戦争から約2000年後の地球だということでした。つまり、核爆発のせいで、シェルターごとタイムスリップしたことになります。そして、核戦争でほとんどの白人は死に絶え、世界はアジア・アフリカの有色人種の手によって復興したのだといいます。その結果、有色人種は“選民”として支配者階級となり、生き残った白人は“下僕”として奴隷同然の身分しか与えられていませんでした。かれらが不法侵入者として問答無用で殺されなかったのは、“選民”にあたるジョーが一緒にいたからでした。
進んだ医学のもと、バーバラは健康な男の双子を出産します。しかし、家族はみな引き離され、ヒューも未来に対し不安を隠すことができません。護民官ポンスはジョーの話からヒューの才能を知り、古文書(つまり英語の書物)の翻訳作業をさせ、ある程度の自由を与えます。監督官メムトックの目を盗んで、バーバラに手紙を届けることに成功したヒューは、いずれ彼女や双子の息子たちと自由の身になることを夢に見ますが・・・。やがて“選民”たちの秘密を知ってしまったヒューは、具体的な脱走計画を実行に移します。
結末は、いかにもハインライン風の前向きなものです(ちゃんと序盤にあからさまな伏線があったことに、ラストでようやく気付く仕掛けになっています。しっかり時間の環は閉じるのですね)

オススメ度:☆☆☆


自由未来 (ハヤカワ文庫 SF 509)
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