未知の地平線 ☆☆

(未知の地平線 / ロバート・A・ハインライン / ハヤカワ文庫SF 1986)

ハインラインの長篇第1作。第二次大戦前(1942年)に雑誌連載されて、戦後間もない1948年に単行本化されたそうです。

未来の地球では、2度にわたる遺伝子戦争(遺伝子改変によって作られた兵士たちが戦いを繰り広げ、結果としては改変された遺伝子のせいで敗れ去った)を経て、遺伝子改変の平和利用が進み、優秀な形質を持つ男女だけが、その形質を生かして最高の子どもたちを生み出すべく国家的な管理がなされています。一方、そのような形質管理を受けない自然な人々“天然種”も、比較対象する基準として生かされています。市民たちは武器を携帯して歩き回り、侮辱を受ければ合法的な決闘も行えます。武器を持とうとしない平和主義者は侮蔑の対象となり、下級市民扱いされていました。
主人公のハミルトンは、ゲームデザイナーとして巨万の富を得ていますが、常に斜に構えて生きており、「人生とは何か」「人はどこからきて、どこへ行くのか」といった哲学的な命題を考えています。その点、経済計算のプロで財務省に勤めている友人モンロー・アルファとは対照的でした。
ある日、ハミルトンは遺伝子調整部長モーダンから呼び出しを受け、子供をもうけるよう要請されます。モーダンの分析では、ハミルトンは人類でも稀なエリート血統に属しており、特に「逆境でも生き残る」意欲と能力に長けているといいます。サバイバルのスペシャリストというわけなのですが、なぜかハミルトンは子孫を残すことだけには熱心ではありませんでした。モーダンはフィリスという女性をハミルトンのもとに送り込み、ふたりの間にはひと悶着起きます。一方、やはり女性に淡白なモンロー・アルファも、元ダンサーをしていた妻ヘイゼルに離婚を切り出され、戸惑っていました。
ハミルトンは、パーティーで知り合った青年マクフィーに誘われて、“生き残りクラブ”という秘密結社に入会します。この結社は現在の体制を覆して、新たな社会を築こうという過激派集団で、武力革命を起こすタイミングを図っているところでした。モーダンに通報し、二重スパイとして活動することになったハミルトンですが、マクフィーの命令は、なんと隙を見てモーダンを射殺しろというものでした。しかも、ハミルトンに心酔しているモンロー・アルファまでが、ハミルトンの歓心を買うために結社に入会してきます。
窮地に追い込まれたハミルトンは、持ち前の生き残り技術を発揮し、強硬手段でモンロー・アルファを安全地帯へ送り出した後、モーダンのオフィスへ駆けつけて、モーダンと同僚マーサ、ハミルトンを追ってきたフィリスとともに立てこもり、攻め込んできたテロリストたちと壮絶な銃撃戦を繰り広げます。一方、人けのない森林公園で目を覚ましたモンロー・アルファは彼にとっての運命の女性マリオンと巡り合います。
革命は過去のものとなり、フィリスと結婚したハミルトンは息子シアボールドをもうけますが、シアボールドの運命には世界の有力者たちが注目していました。やがて、ハミルトンもシアボールドがテレパシーなどの超能力を持っていることに気付きます・・・。

遺伝子改変をテーマにしているわけですが、当然ながら本作が書かれた時代にはDNAなど知られておらず、ハインラインがベースにしている最先端科学理論は「メンデルの法則」です(^^; それでも、ハインラインが描く未来ビジョンは決して古めかしくはなく、オプティミスティックな希望にあふれたものです。きちんとした柱となるストーリーがなかったり、様々なエピソードが途中でどこかへ行ってしまったり、物語としての完成度はあまり高くありません。まあ、解説にあるように、「ハインラインも若かった」ということで(笑)。

オススメ度:☆☆



未知の地平線 (ハヤカワ文庫SF)
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