落日の彼方に向けて(上・下) ☆☆☆

(落日の彼方に向けて 上・下 / ロバート・A・ハインライン / ハヤカワ文庫SF 1997)

巨匠ハインラインの遺作となった長篇。ラザルス・ロング・シリーズ関連の諸作品を集大成した作品です。それだけに、それ以前の作品のネタバレも満載ですので(知らないと気付かないかもしれませんが)、できれば本作は最後に読む方がいいでしょう。ちなみに関係する長篇では「獣の数字」と「宇宙の呼び声」を読んでいませんでしたが、この時点では、どのエピソードが関連しているのか、まったくわかっていません(笑)。ですが、「メトセラの子ら」、「ウロボロス・サークル」「愛に時間を」は、先に読んでおいたほうがいいかもしれません。

語り手で主人公のモーリン・ジョンソン・ロングは、見知らぬ土地のホテルの一室で目覚め、自分が全裸で、全裸死体となった見知らぬ男とベッドを共にしているのに気付きます。唯一、時空を越えられる猫のピクセルだけが一緒にいました。モーリンは警察を呼びますが、なんらかの重犯罪の容疑をかけられ、精神鑑定のためにドクター・リドパスの診療所へ連れて行かれます。モーリンは、あのラザルス・ロングの実母で、20世紀後半の時間線から連れ去られ、若返り処置を受けて時間線(パラレルワールドと言い換えてもいいでしょう)を監視・修正するウロボロス・サークルの一員として活動していました。今回も、過去を研究するつもりで出発したばかりでしたが、どうやらここは、彼女の知る時間線ではないようでした。
しかし、物語はこの時間線でのモーリンの動向を離れ、19世紀末のカンザスシティで生まれ育ったモーリンの半生を、回想記風に描き出していきます。医師だった父アイラ・ジョンソンと母アデル・ジョンソンに、多くの兄弟姉妹と一緒に育てられたモーリンは、進歩的な考え方のアイラから性愛を楽しむための知識と守らなければならないルールを教えられ、また長寿の遺伝子を残そうとするハワード財団について聞かされます。様々な経験を積んだモーリンは、ハワード財団の仲介で出会ったブライアンと結婚し、多くの子どもをもうけると共に、多くの(夫公認の)愛人たちと付き合います。そして、第一次大戦前夜、不意に現れた謎の青年セオドアに惹かれますが、彼が未来から来た子孫(厳密にはそれ以上の意味があるのですが)だと聞かされ、将来に起きる様々な事実を聞き取ります。そうして未来を知っているという事実は、後にモーリン自身が理事を務めるハリマン企業の隆盛に大いに貢献することになります。しかし、軍に志願してヨーロッパ戦線に渡ったセオドアは、行方不明になってしまいます。
セオドアがもたらした情報のために大恐慌を切り抜けたモーリンとブライアン夫婦(ついでにハワード財団も)は、さらに財産を蓄えていきますが、今度は第二次大戦で老齢の父アイラが軍医として志願し、ドイツの空爆に遭って戦死してしまいます。
戦後、離婚したモーリンは、自由な生活を謳歌しつつ、しつけに失敗した子供たちに悩まされ、愛人のジョージと共にハリマン企業の発展に尽力します。そして死を迎えようとする頃、子孫たちに助けられて若返り措置を受け、ウロボロス・サークルのメンバーとして、ラザルス・ロング・ファミリーの一員として、第二の(?)人生を歩み始めます。その挙句、冒頭のわけのわからない状態に置かれてしまったわけです。
その後、死刑になる直前に「美的削除委員会」なる秘密団体に救出されたモーリンですが、この団体も単なる殺し屋集団に過ぎませんでした。唯一の頼みの綱は、メッセージを付けて送り出したピクセルでしたが・・・。
それからまあ、いろいろあって、ラストはこの一言で結ばれています。

「そして、わたしたちはみな、それからのち幸せに暮らしました、とさ」

オススメ度:☆☆☆



落日の彼方に向けて〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)
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落日の彼方に向けて〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)
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