栄光の道 ☆☆☆

(栄光の道 / ロバート・A・ハインライン / ハヤカワ文庫SF 1982)

ハインライン中期の異世界冒険(?)SFです。

アメリカ人青年オスカーは、つつましい収入を確実に得て地道に生活しようという安定志向の人間でしたが、様々な事情から軍に志願することになってしまいます。軍でも内地でのデスクワークを望んでいましたが、こともあろうにベトナムの最前線へ送られます。しかし、その用心深い臆病な性格ゆえに何回も死地を脱し、結局は負傷して退役することになります。ドイツへ移住していた両親のところへ向かったオスカーですが、行き違いからフランスのヌーディストビーチで金のかからない(笑)生活をすることになります。そこで出会った理想の美女(もちろんオールヌード)に一目惚れしてしまいますが、名前も連絡先も聞けません。軍隊時代に手に入れた籤が当たったことに喜んで銀行へ行きますが、籤は偽物――絶望したオスカーが開いた新聞に、「勇者求む」という広告が載っていました。しかも、なぜかその広告はオスカーを名指ししているかのようでした。指定された場所に赴いたオスカーは、ノームのような下品な小男と、その女主人に迎えられます。女主人こそ、ヌーディストビーチで出会った女性にほかなりませんでした。
彼女(オスカーは、スターと呼ぶことにします)が言うには、スターと下男のルーフォ(件の小男)は、ともに異世界で強力な敵と戦い、最終目的を達成してくれる勇敢な男性を探しており、オスカーは条件にぴったりだということでした。それ以上の詳しい事情は語ってもらえないまま、オスカーが惚れた弱みで(笑)同行を承諾すると、スターは隣室に描いてあった五芒星形から、3人をあっという間に異世界の野原へ転移させてしまいます。そればかりか、ルーフォが携えているケースには、その容量の数十倍数百倍ものアイテムを入れることができるようでした。まさに“剣と魔法”の異世界ヒロイックファンタジーの始まりです――が、ヒーローのオスカーは何もわかっておらず、ヒロインのスターは魔法使いと僧侶と女戦士と賢者を兼ねたようなオールマイティな存在ですが(笑)。ちなみにルーフォはシーフ兼商人でしょうか。
一行は最初の難関、不死の怪物イーグリを、オスカーの斬新な(実は苦し紛れの)策で突破すると、今度は“角のある幽霊”どもの群れや吸血とびの襲撃をなんとか切り抜けて、その晩の宿となる領主ドラルの屋敷へたどり着きます。スターと旧知の間柄でもあるドラルは、一行を歓迎するため盛大な乱痴気パーティーを開いた後、ふらふらになって寝室へ引き取ったオスカーのもとへ、最高の歓待のしるしとして妻とふたりの娘を届けてきます。しかし、堅物のオスカーは断り、その結果、ドラルとスター一行との間に決定的な対立が生じてしまいます。結局、スターに説得されたオスカーが詫びを入れ、あらためて儀式(笑)が執り行われて、一行は平和裏にドラルの領地を出発できました。それをきっかけに、けじめをつけようと(勝手に)決心したオスカーはスターに求婚し、スターもルーフォの反対を押し切って受け入れ、ふたりはもっともシンプルなやり方で結婚します。
さらに竜がうようよしている森を抜け、洞窟を抜けて、一行はついに目的地に到着します。そこは、ある宝物を収納して守るためだけに建てられた複雑な構造の塔で、罠や迷路や怪物にあふれ(ドルアーガの塔みたいなものですな)、宝物――スターが求める“卵”へ通じる道はひとつしかありません。ただ、オスカーには天性の方向感覚があり、目くらましの魔法や迷路に惑わされないというのが、かれらの強みでした。苦難と冒険の末、かれらは“卵”――実は、20の宇宙を統べる王室に蓄積された知恵と情報がすべて収められたアーカイブ――の奪還に成功します。めでたしめでたし――。
ではなく、20の宇宙の中心である惑星センターで何不自由ない暮らしを約束されたオスカーは、心安らかではありませんでした。彼が述懐する通り、「この平和な世界に、退役したヒーローほど役立たずなものはない」からです。オスカーはスターと別れ、地球に戻る決心をしますが・・・。

「目的を達してしまって、存在意義を見失った英雄」というテーマは、SFの世界でもベトナム帰還兵のメタファーとして、しばしば描かれますが、発表時期からして、これはごく初期のものでしょう。後の時代では、さらに深刻に取り上げられるようになります。

オススメ度:☆☆☆


栄光の道 (1979年) (ハヤカワ文庫―SF)
栄光の道 (1979年) (ハヤカワ文庫―SF)

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