時の門 ☆☆☆☆

(時の門 / ロバート・A・ハインライン / ハヤカワ文庫SF 1988)

ハヤカワ文庫版『ハインライン傑作集』の第4巻です。第3巻「魔法株式会社」は既読ですが、第1巻、第2巻はいずれ後ほど登場します。本書には第二次大戦前に書かれた初期作品が2作(「時の門」と「金魚鉢」)、戦後から1950年代(いわゆるハインラインの第2期)に書かれた作品が5作、計7作品が収められています。

「大当りの年」:その年、世界中でじわじわと異変が起きていました。しかし、個々のささやかな異常を総合的に捉えられないため、政府機関も気付いてはいません。統計学のエキスパート、ブリーンだけは、独自の分析で事態を把握しようとしていました。彼は、白昼、衆人の目の前でストリップを演じた若い女性ミード(これも異変のひとつ)を助け、自宅へ連れ帰って自分の分析結果を語ります。やがて、異変はエスカレートし、ブリーンとミードは狂気に陥った都会を逃れて人のいない田舎へ避難しますが・・・。

「時の門」:学位論文を書こうと部屋に閉じこもっていたボブ・ウィルソンの目の前に、突然見知らぬ(?)男が現れます。男はジョウと名乗り、“時の門”を通って未来からやって来たと語ると、一緒に来るよう促します。抵抗するボブの前に、さらにもう一人の男が出現し、ジョウと第三の男は殴り合いを始めますが、巻き込まれたボブは弾みで“時の門”をくぐり抜けてしまいます。ボブを出迎えたのはディクトールと名乗る中年男でした。ディクトールの依頼で再度“門”を通り抜けたボブは、自分の部屋へ戻り、謎の男ジョウとして自分自身と対面することになります。ディクトールはボブに何をさせようとしているのでしょうか。ディクトール(および彼がもたらしたタイム・パラドックス)を出し抜くべく、ボブは「夏への扉」もかくやという時間を超えた冒険に挑みます。
ある意味、「夏への扉」の原型でしょう。

「コロンブスは馬鹿だ」:プロキシマ・ケンタウリへ向かおうとする世代型宇宙船プロジェクトの意義と、成功の可能性を酒場で語り合う男たちは、コロンブスのアメリカ大陸発見になぞらえて議論を進めます。

「地球の脅威」:月のルナ・シティで観光ガイドのアルバイトをしている16歳の女子高生ホーリイは、幼馴染のジェフをパートナーとして起業する目標に向けて、日々過ごしています。しかし、今回、彼女がガイドを務めることになった地球からの観光客ミス・ブレントウッドはすこぶるつきの美女で、ホーリイが良かれと思ってジェフにガイド役を頼んだところ、ジェフはミス・ブレントウッドにめろめろ(笑)になってしまいます。パートナー(と未来の計画)を失いそうになったホーリイは焦りますが・・・。

「血清空輸作戦」:疫病に襲われた冥王星基地を救うため、光子船パイロットのクリューガー中尉とアプルビイ中尉は、限界に近いGに耐える決死の飛行に旅立ちます。ハインライン版「地獄のハイウェイ」「ユーコンの疾走」

「金魚鉢」:ハワイ近海に発生した謎の大竜巻の正体を探るため、老科学者グレイヴズの計画にのっとって、若手科学者アイゼンバーグは小型潜水球で荒れ狂う水柱に突入しようとします。ところが、準備段階で襲ってきた激浪に、アイゼンバーグはさらわれてしまいます。彼の生存を信じるグレイヴズは、自ら潜水球に乗って水柱へ入り込みます。グレイヴズの仮説によれば、大竜巻は未知の知性がもたらしたもの(だからアイゼンバーグも拉致されただけ)だというのですが・・・。

「夢魔計画」:超能力者を軍事利用するというプロジェクトが極秘に進められているアメリカに、ソ連が恐るべき攻撃をかけてきます。アメリカの38の主要都市に核爆弾を仕掛け、一斉に爆発させるというのです。アメリカ軍は、数少ない超能力者を動員して、透視能力者には爆弾を探させ、念動力者には信管の発動を抑えるよう指示します。不眠不休の超能力者たちが次々と倒れる中――。結末はタカ派ハインラインの面目躍如というべきものです。

オススメ度:☆☆☆☆
(実際の読了日:2012/2/18)


時の門 (ハヤカワ文庫 SF―ハインライン傑作集 (624))
時の門 (ハヤカワ文庫 SF―ハインライン傑作集 (624))

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