イクシーの書庫

アクセスカウンタ

zoom RSS 透明人間の告白(上・下) ☆☆

<<   作成日時 : 2012/03/22 18:36   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

(透明人間の告白 上・下 / H・F・セイント / 河出文庫 2011)

以前に新潮文庫から出ていて、少し気になっていたのですが、ブックオフなどで見かけても「そのうち」と思い、見送っていました。今回、河出文庫から復刊されたのを知って(実際、新潮文庫で絶版になったヤツを河出文庫が復刊するというパターンは多いような気がします。「銀河ヒッチハイク・ガイド」シリーズとか)、隔離中(笑)に家人に頼んで買ってきてもらったわけです。「『本の雑誌』が選ぶ30年間の第1位」という宣伝文句が帯に載っていましたし。

結論……見送るべきでした(^^; 理由は後述するとして、まずは上下巻800ページにおよぶストーリーを紹介しましょう。

30代のやり手証券アナリスト、ニック・ハロウェイは、ニューヨーク・タイムズの記者をしている恋人(にしたいと思っている)のアンとともに、プリンストンにあるハイテク・ベンチャー企業「マイクロ・マグネティックス」の記者会見会場へと向かっていました。ニックは最初から、記者会見をだしにアンをふたりきりの郊外旅行に誘い出そうとしていたわけですが、思いがけず、前夜のうちにアンと一夜を共にしてしまっていました。アンには婚約者がいるにもかかわらず、ニックはアンとの関係を確固たるものにしようと決意しています。
しかし、プリンストン駅に着くと、過激な環境保護団体のリーダー、キャリロンがアンを出迎え、ふたりきりになるというニックの目論見は早くも崩れてしまいます。それでもニックはマグネティックス社へ着くと、記者会見に先駆けて、責任者のワックス教授から彼の研究のポイントを強引に聞き出そうとします。ですが、成果が上がらないまま記者会見が始まり、気分が悪くなったニックは研究所に勝手に入り込んで、洗面所はおろかサウナまで使って昼寝としゃれ込んでしまいます。その間に、キャリロンは会見を妨害するために破壊工作を試み、仕掛け爆弾を爆発させます。その結果、キャリロンとワックス教授は死に、みなが避難した後、研究所に唯一残っていた(猫も一匹残っていましたが、登場場面は少なく、すぐにストーリーから消えてしまいます)ニックの身体には、信じられない異変が起こります。タイトルから分かるように、設備から小道具から、床から壁からすべて透明になってしまった研究所と同様、ニックも衣服と共に透明人間になってしまいます。
気を失っていた間に、研究所周辺は閉鎖され、政府の秘密機関の管理下に置かれてしまっていました。ジェンキンズ大佐の指揮で、タイラー、モリッシー、クリランといったエージェントたちが、透明になった研究所の内部をおそるおそる探索しています。ニックは思わず存在を明かしてしまいますが、透明人間としての自分が政府組織に捕まれば、自由を失い利用されるだけだと悟ります。科学者たちに徹底的に調べられ、最後はスパイとして酷使されるのが関の山でしょう。ニックは、どうにかして閉鎖を破り、脱出を試みます。ここの脱出シーンは、とにかく細かく描かれて、ニックが透明な工具類や衣服など、後々必要になるグッズをかき集め、透明な家具を組み合わせて鉄条網を乗り越える場面が、100ページ以上にわたって続きます。ニックはタイラーを透明な拳銃で撃ち、研究所に火を放つと、封鎖を破って抜け出します。
脱出したニックは車を調達して、迷った挙句、ニューヨークの自分のアパートに帰り着きます。ここからの、透明人間として日常生活を送ろうとする孤軍奮闘が、中盤のヤマとなります。例えば、なにか食べると、食道から胃に入り、消化されつつ小腸へ移っていく(最後には吸収されて見えなくなります)のがリアルに観察できます。言ってみれば、「ゲロが宙に浮かんでいる」わけですから、ニックも大ショック。でも次第に冷静になって、電話注文で様々な食料を取り寄せ、食材と消化時間の奸計をデータにとって研究することまでします。自分のオフィスにも電話をして、対面は病欠すると連絡しますが、いつまでも通用する言い訳ではありません。結局、仕事を辞めて自分探しに出る、と仲間には思わせ、連絡を絶つことに成功します。しかし、政府機関は探索の輪を狭め、ついにニックのアパートは襲撃を受けます。命からがら、ニックは脱出するのでした。
住む場所を失ったニックですが、ニューヨークに多数ある会員制のクラブに入り込んで、夜を過ごすことにします。空いている宿泊室で眠り、レストランの厨房で食料を盗み食いします。シャワーも浴びられる、プールで泳ぐこともできる――しかし、ジェンキンズらの手が次々と延び、ニックはクラブを転々とするしかありませんでした。
一方、生活の糧を稼ぐため、ニックは証券アナリストとしての経験を生かし、細かいことを気にしないお人好しの代理人を見つけると、外国帰りの裕福な青年という架空の存在を創り上げて社会保障番号や銀行口座を入手し、住人がずっと不在のアパートメントを利用して、株取引を始めます。透明人間ならではの特権を生かし、目を付けた企業に忍び込んではインサイダー情報を入手して、株取引に生かします。こうして、ニックの預金は雪だるま式に増えていきます。同時に、ニックは身辺に迫るジェンキンズ大佐に逆襲すべく、一計を案じて大佐の本拠地を突き止め、破壊工作をやってのけます。
ですが、透明人間のニックは、人と直接触れ合うことができず、特に女性関係でフラストレーションを抱えていました。たびたびパーティー会場に潜り込んでは女性観察していたニックですが、あるパーティーで見かけたアリスという女性に、こらえきれず闇の中で触れてしまいます。当初ショックを受けたアリスですが、神秘主義者の彼女はニックを悪魔か幽霊だと思い込み、彼との関係を楽しみ始めます。ニックはアリスの部屋に転がり込み、今度こそ安住の地を見つけたかと思われましたが――。

とまあ、波乱万丈のニックの運命がきめ細かく描かれるわけですが、本書のいちばんの問題点は、「どう見ても、ニックに感情移入できない」ということなのです。たしかにニックは“巻き込まれ型”の主人公ですが、巻き込まれた事情には、同情の余地なし。自分勝手な動機で自分勝手に行動し、自業自得と言えます。透明人間になってからの行動を見ても、たしかにやむを得なかったとはいえ、やってることは窃盗、不法侵入、窃視、公文書偽造・行使、私文書偽造・行使、産業スパイ、詐欺、暴行傷害、現住建造物放火、器物損壊、公務執行妨害など、犯罪のオンパレードです。さらに、ジェンキンズの組織を襲撃する際も、自分勝手な論理で自己正当化するため、読む方は思わず大佐の組織の方に味方しながら読んでしまいます。
とにかく、ニック・ハロウェイは、最初から最後まで、同情の余地なしの「自分勝手な、イヤなヤツ」なんです。絶対に友達になりたくないタイプ。その証拠に、透明人間になる前も、ニックには心を開いて語り合える友人はひとりもいませんでした。
そうではない感じ方をする方もいるでしょう。でも、自分にとっては拒否反応しか起きませんでした(^^;

オススメ度:☆☆
(実際の読了日:2012/3/4)






透明人間の告白 上 (河出文庫)
河出書房新社
H・F・セイント

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 透明人間の告白 上 (河出文庫) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



透明人間の告白 下 (河出文庫)
河出書房新社
H・F・セイント

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 透明人間の告白 下 (河出文庫) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
透明人間の告白(上・下) ☆☆ イクシーの書庫/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる