魔法株式会社 ☆☆☆☆

(魔法株式会社 / ロバート・A・ハインライン / ハヤカワ文庫SF 1993)

ハヤカワ文庫版『ハインライン傑作集』の第3巻。この傑作集は全4巻ですが、ほかの巻もいずれ登場します。
ハインラインは1939年にデビューしましたが、1942年から47年まで第二次大戦で軍務に就いていたため、作家活動に空白期間があります。本巻には2篇の中篇が収録されていますが、いずれも戦前に書かれた初期作品です。

「ウォルドウ」:近未来、世界は放射エネルギーに完全依存していました。ところが、放射エネルギーのテクノロジーを利用した飛行機械の推進機構に異常が生じ、放射エネルギー企業の最大手NAPAは対応に苦慮しています。あらゆる解明手段が失敗に終わった末、技術本部長スチーヴンズは、軌道上に住む人間嫌いの天才科学者ウォルドウに頼ることにしました。ウォルドウは、先天性の筋無力症に冒されていましたが、天才的な頭脳を駆使して、微弱な力を増幅して様々な機械を操作するマニピュレーター『ウォルドウ』を発明し、そこから得た富を使って重力の影響を受けない(つまり、筋肉に負担がかからない)軌道上に建設した『自由砦』で、気ままな生活を送っています。
偏屈なウォルドウに会うために、スチーヴンズはウォルドウが唯一心を許している伯父の老医師ドク・グライムズを口説き落として、『自由砦』に同行してもらいます。
すったもんだの末、NAPAとの間で推進機構の不調の謎を解明する契約を結んだウォルドウですが、同時に伯父のグライムズからも宿題をもらいます。グライムズは、放射エネルギーの無制限な利用により、人類の運動能力が次第に衰えているのではないかと考えており(学界からは否定されています)、人類を救う方法の考案をウォルドウに依頼したのでした。
ウォルドウの解明作業は遅々として進みませんでしたが、なんとアメリカ西部の砂漠に住む隠者シュナイダー老人が、動かなくなった装置を異様な方法で直してしまいます。ウォルドウは、危険を冒して地上に降り、シュナイダーと面談する決意を固めます。そして、シュナイダーが信じる『他界』の存在を、最新の科学理論で説明しようとするウォルドウは、ついに驚くべき結論に達することになります。

「魔法株式会社」:ハインライン作品としては異色と言える、魔法ファンタジーです。ポール・アンダースンの「大魔王作戦」やハリイ・タートルダヴの「精霊がいっぱい!」と同じような世界観と設定ですが、書かれたのは「魔法株式会社」のほうがはるかに早く、先駆的作品といえます。
異世界『半界』に住む妖精や精霊の力を引き出せる魔法使いが普通に存在する世界では、ビジネスに魔法を活用してサービスレベルを上げるのは当たり前になっています。アメリカの地方都市で建設業を営むアーチイも、それなりに魔法使いを利用していましたが、この町にもあくどい商売をする連中が入り込んできていました。ヤクザか地上げ屋のようなもので、契約しない相手には魔法を使った嫌がらせをして商売の邪魔をする、といった輩です。
アーチイの店も派手に壊されてしまい、アーチイは仕事仲間のジェドスンと相談して、魔法使いのピドルに調査と解決を依頼しますが、ピドルでは歯が立たず、逆に契約をめぐってもめる始末。しかし、青年魔術師バディに紹介された老魔女ジェニングズ夫人は腕が確かで、アーチイの店を破壊した四大精霊を呼び出して、あっさり店を再建させます。
しかし、嫌がらせは続き、ジェニングズ夫人が紹介してくれたアフリカ出身の黒人呪術師ロイス博士も、黒幕の正体を暴こうと努力しますが、相手もなかなか尻尾を掴ませません。やがて、魔法に関する公正取引協会を設立したディットワースなる人物が黒幕として浮かび上がってきますが、時すでに遅く、ディットワースが提案した魔法使いの独占雇用を認める法律が州議会に提出されてしまいます。ついにディットワースの正体を知ったアーチイやジェドスンは、ジェニングズ夫人やロイス、バディらの協力を得て、『半界』にある敵の本拠地に直接乗り込むことを決心します。

オススメ度:☆☆☆☆


魔法株式会社 (ハヤカワ文庫 SF 498 ハインライン傑作集 3)
魔法株式会社 (ハヤカワ文庫 SF 498 ハインライン傑作集 3)

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