銀河市民 ☆☆☆☆

(銀河市民 / ロバート・A・ハインライン / ハヤカワ文庫SF 1973)

現在は、「ハヤカワ名作セレクション」として同文庫から復刊されていますが(下記リンク)、読んだのは旧版です(ブックオフで105円だったもので(^^;)。

人類が銀河各地に広がった遠未来、地球を遠く離れた辺境の九惑星連邦星域では奴隷売買が盛んに行われていました。主星サーゴンの奴隷市場で競りにかけられた男の子ソービーは、やせこけて傷だらけだったために買い手がつかず、結局は物乞いの老人バスリムが二束三文で買い取ります。バスリムは片目で片足、歩くこともできず、貧民街の穴蔵に住む物乞い(実際に作品中で使われている表現は、現代では完全なNGワードです)でしたが、じっくりとソービーの心を開かせ、栄養のある食べ物を与え、さらに催眠学習を使った高等教育まで施します。ソービーは敏捷で生活力のある少年に成長し、バスリムの手伝いをしていましたが、手伝いの中身は物乞いだけではありませんでした。どうやらバスリムには、物乞い以外の裏の顔があるらしく、ソービーはあちこちの相手にメッセージを届ける役割も果たしていました。
ある日、バスリムはソービーに催眠術をかけて、意味不明の五つの星間言語で長いメッセージを記憶させます。もしもバスリムが死んだ場合、ソービーは特定の5人のうち最初にサーゴンへやって来た自由商人に伝言を伝え、相手の指示に従うべし、というのです。それから間もなく、サーゴン宇宙港へ自由商人の宇宙船シス号が到着します。それは、バスリムが告げていた5人のうちのひとり、クラウサ船長の船でした。それを確認しに宇宙港へ行ったソービーが戻ると、住処の穴蔵は滅茶苦茶に荒らされ、当局に連れ去られそうになったバスリムは自決していました。住民たちの協力で捜査を逃れたソービーは、どうにかクラウサ船長と接触し、バスリムの伝言を伝えます。自由商人クラウサ一族は、“バスリムへの借りを返す”ため、ソービーをシス号に受け入れます。
自由商人は故郷惑星を持たず、宇宙船を故郷として交易の旅を続ける銀河のさすらい人で、惑星に張り付いて生活する人々を“フラキ”と呼んで軽蔑していました(『ノウンスペース』のフラットランダーみたいなものですな)。最初は“フラキ”として無視されていたソービーですが、やはりシス号に乗っていたフラキの人類学者マーガレット博士の手ほどきで、次第に自由商人の特異な規律や習慣を知っていきます。船の実質的な支配者、一等航宙士(クラウサ船長の母親)に認められ、一族の養子とされたソービーは、次第に才能を認められて頭角を現し、後には単独で、襲ってきた海賊船をミサイル攻撃で撃破する手柄も上げます。しかし、同年代の娘マタがソービーに恋をしたことから、一族の掟に疑問を抱いたソービーは、シス号を降りることを考え始めます。
実は、クラウサ船長も、別の動機からソービーと同じ悩みを抱えていました。バスリムの伝言で、銀河連合宇宙軍と接触し次第、ソービーを引き渡して彼の出自を調べさせるようにと指示されていたのです。クラウサは、ソービーを説得して、宇宙軍の巡視艦ヒドラ号に引き渡します。艦長のブリスビー大佐から、初めてソービーはバスリムの正体を聞かされます。物乞いバスリムは、実は銀河連合宇宙軍の特殊部隊Xの大佐で、奴隷売買組織の秘密を暴くべく、九惑星連邦に潜入していたのでした。バスリムの伝言(遺言)を果たそうと、ブリスビーはソービーの出自の調査を始めますが、苦労の末に判明したのは、思いもかけない名前でした。
ただちにソービーは地球へ送られ、これまでとは180度違った運命に直面することになります。カルチャーショックに遭いながらも、ソービーは、サーゴンやシス号、ヒドラ号での経験を生かして運命を切り開いていくわけですが、そのあたりの詳細は自粛しておきましょう(笑)。

少年の成長譚と冒険活劇の要素も十分ですが、単なるスペースオペラでなく、銀河に拡散した人類というビジョンを文化人類学的に(マーガレット博士の講義は、やや退屈ですが含蓄に富みます)描いている点でも、深みのある作品と言えるでしょう。

オススメ度:☆☆☆☆


銀河市民 (ハヤカワ名作セレクション ハヤカワ文庫SF)
銀河市民 (ハヤカワ名作セレクション ハヤカワ文庫SF)

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