ウロボロス・サークル ☆☆☆☆

(ウロボロス・サークル / ロバート・A・ハインライン / ハヤカワ文庫SF 1996)

巨匠ハインラインの最晩年の作品。書かれたのは亡くなる3年前、ハインラインが78歳の時ですから、その創作欲と筆力には恐れ入ります。

元軍人の中年の作家、語り手のリチャード・エイムズは、民間の宇宙居留地(いわば、軌道上に浮かんだ金持ちのためのコンドミニアムみたいなもの)“ゴールデン・ルール”に滞在していましたが、知り合ったばかりの魅力的な女性グエンとレストランで食事中、テーブルにやって来た見知らぬ男に殺人を依頼されます。軍人時代の数少ない仲間しか知らない合言葉を口にした男に対して、リチャードは詳しく事情を聞こうとしますが、相手はダート銃で撃たれて死んでしまいます。その晩、グエンはリチャードの部屋を訪れて一夜を共にした後、突然結婚を申し込んできます。とまどいながらも喜んで応じたリチャードは、昨夜の殺人事件について調べ始めますが、そのような事件が起きたというニュースはどこにも見つかりません。そればかりか、居留地の支配人からは強制退去を命じられて、着の身着のまま部屋を追い出され、グエンの部屋へ行ってみれば、グエンにも同じ命令が出ていました。動じないグエンは、手馴れた様子でセキュリティを出し抜き、黙々と家財道具を運び出そうとします。飛び込んできた刺客を返り討ちにしたあと、その間抜けなホームレス(居留地に住人としてのデータのない、データ上は幽霊のような存在で、見つかれば即座に宇宙空間へ投棄されます)の不良青年・ビルを手下にしたリチャードとグエンは、支配人に直談判に赴きますが、居留地の重要人物を殺害した容疑で追われる破目に陥ります。ふたりは何でも屋のドクター・シュルツや、グエンの古い知り合いたちの協力で、(ビルの分を含めて)偽造パスポートを手に入れ、レンタルしたオンボロ宇宙艇でゴールデン・ルールを脱出します。
月面の居留地ホンコン・ルナに向かったリチャード、グエン、ビルですが、オンボロの宇宙艇は言うことを聞かず、満足な酸素や宇宙服もないまま、不毛の月面の荒野に不時着することになります。最寄の集落からかけつけたヘンダースン一家に(法外な救出料を支払って)助け出された一行は、ようやくひと息をつきます。ここまでが第1部。
月面を走る定期運行バスに乗って、リチャードたちはホンコン・ルナに向かいますが、いきなり出現した2組の無法者集団に襲われ、運転手のリリベット小母さんは撃たれて重傷、ほかにも乗員乗客に死傷者が出ますが、リチャードとグエンの奮闘で、なんとか賊の撃退に成功します。ホンコン・ルナの警察に保護された一行ですが、なぜかホンコン・ルナの市長は、襲ってきた賊などおらず、死傷者を出した犯人はリチャードだと決め付けます。その場はグエンの機転で切り抜けたものの、ふたりともゴールデン・ルールで殺人犯としてお尋ね者になっていることがわかり、間髪入れずルナ・シティへと脱出しなければならなくなります。
ルナ・シティでビルと別れ、ホテルへ落ち着いたリチャードに対し、グエンは思いもよらない告白をします。自分の本名はへイゼル・ストーンであり、100年前の月世界独立戦争(詳細は「月は無慈悲な夜の女王」に描かれています)の主要な関与者のひとりだというのです。別の時間線で若返り処置を受けた後、重要な作戦にリチャードをスカウトするために、工作員として接近し、結婚を申し込んだけれど、本当にリチャードを愛してしまったのだ・・・と。もちろんリチャードは信じません。しかし、買い物に出かけて帰ってきたふたりは、ホテルの前で襲撃され、重傷を負ったリチャードは、突然出現した宇宙艇のクルーに救出されます。ここまでが第2部。
昏睡から目覚めたリチャードは、「愛に時間を」の登場人物たちと出会うことになります。そして、数千年にわたるTHQ(時間軍団司令部)の目的と活動内容を知らされ、月面コンピューター、アダム・セレーネ救出作戦への参加を求められるのですが・・・。

これまでのハインライン作品の集大成(ちと無理がありますが)で、「愛に時間を」と「月は無慈悲な夜の女王」のほか(この2作品は先に読んでおくべきでしょう)、「獣の数字」や「異星の客」との関連性もあります。ただ、風呂敷を広げすぎたせいか、歳のせいか(←おいっ)、終盤でわけがわからなくなって(笑)、ラストが尻切れトンボになっている印象があるのが残念です。

オススメ度:☆☆☆☆


ウロボロス・サークル (ハヤカワ文庫 SF (1140))
ウロボロス・サークル (ハヤカワ文庫 SF (1140))

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