愛に時間を 1~3 ☆☆☆☆

(愛に時間を 1~3 / ロバート・A・ハインライン / ハヤカワ文庫SF 1991、1993、1994)

ハインライン後期の大長編で、人類の中の長命種族の運命を扱った「メトセラの子ら」の32年ぶりの続篇です。実は「メトセラの子ら」を読んだのは十代の頃ですから、ほぼ同じだけの間をおいて読むことになったわけです。ちなみに「メトセラの子ら」を読んでいなくても、ストーリーがわからなくなるということはありませんが、こちらを先に読んでしまうと「メトセラの子ら」のネタが完全に割れてしまいますので、やはり順番に読むことをお勧めします。
文庫本で全3巻、1200ページ近い長さの割には、構成はシンプルです。ただし、ストーリーを紹介すると、どうしても「メトセラの子ら」のネタバレになってしまいますので、ご注意ください。
















20世紀初頭のアメリカに生まれ、人類の中の密かな長命種族ハワード・ファミリーの一員として育ち、後にはファミリーの指導者となって一族の地球脱出を主導したラザルス・ロング(他にも様々な名前で人類の未来史に名を残しています)は、齢2000歳を越えた今、宇宙に進出した人類(半数はハワード・ファミリーで、しかもラザルスの直接・間接の子孫です)の中心惑星セカンダスのスラム街で、若返り処置による延命を拒否して死のうとしていました。しかし、惑星の評議会臨時議長(なぜ“臨時”かと言えば、正式な議長職は常に最長老たるラザルス・ロングのものだからです)アイラ・ウエザラルに発見され、なかば強制的にハワード若返り病院に収容されて処置を受けることになります。
人類の精神的停滞を気にしていたアイラは、2000年以上にわたるラザルスの知識と経験から事態を打開するヒントを得るべく、回想録にも記されていないラザルスの過去の体験談を何でもいいから聞かせてくれと要請します。シェラザードよろしくラザルスは承知しますが、交換条件として出したのは、自分もまだ経験していないことを探し、体験させてくれというものでした。アイラをはじめ、ラザルスを担当した若返り技術者のイシュタル(女性)とギャラハド(男性)、アイラの美貌の娘ハマドリュアド、女性の自意識を持つ管理コンピューターのミネルヴァらは、総力を結集してラザルスの要望を満たすべく探索を始めます。
その間、ラザルスは過去の人生のエピソードを語っていきますが、主要なふたつのエピソードは、どちらもタイムスケールは数十年から百年にわたるもので、優に独立した中篇として扱えるものです。
「そうでなかった双子の物語」:ラザルスが星間貿易商だった時代、とある惑星で奴隷商人から買い取ったのは、男女の双子、ジョウとリータでした。ふたりが愛し合っていることを知ったラザルスは、近親交配によって障害児が誕生する確率を必死に計算します。やがて、世間のことを何も知らなかったふたりは、ラザルスの入念な指導を受けて惑星ランドフォールに落ち着き、生活を始めます・・・。
「ある養女の話」:開拓初期の植民惑星ニュー・ビギニングズで銀行を経営していたラザルス(当時の名前はウッドロウ・スミス)は、火事で両親を失った女の子ドーラを養女にして育てることになります。やがて一人前に成長したドーラは、“ウッドロウおじさん”との結婚を真剣に考え始めます。しかし、ドーラはハワード・ファミリーの血筋ではなく、ラザルスは長命人種と短命人種の結婚はうまくいかないことを身をもって知っていました。ですが、ドーラの真摯な想いに打たれたラザルスは、ドーラと結婚し、誰もいない未開の土地へふたりだけで旅立ちます。そこからの展開は本格派の西部開拓小説そのもので、フロンティア精神の強さがあふれており、作中の白眉といえます。そして、後にラザルスは自分の宇宙艇と制御コンピュータを“ドーラ”と名付けることになります。
その後、ミネルヴァが提案した“未知の体験”として、ラザルスは自分のクローン細胞から生まれた妹であり娘でもある双子姉妹ローレライとラピス・レイズリをもうけ、人間の女性として生まれ変わったミネルヴァや、アイラ以下のファミリーの面々と共に、新たな惑星ターシャスで、多夫多妻の共同体的家族で生を(性を)謳歌していました。そしてラザルスは、もうひとつの冒険、過去への時間旅行に出かけることになります。目的地は1919年のアメリカ合衆国――そこでラザルスは自分を生み育ててくれた家族(両親や祖父、兄弟姉妹、腕白な幼児だった自分自身とも!)と、(もちろん)身分を隠して再会しますが・・・(きっと「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のスタッフは、この作品を読んでいたに違いありません)。

タイトルが暗示しているように、全篇を貫くのは、冒頭でコンピューターのミネルヴァが質問する「愛とは何か?」という命題です。2000年にわたる人生経験から、様々な愛の形――純愛、性愛、情愛、情欲まで――を知っているラザルスは、自らの行動(回想も含めて)で、基本的にはオープンでオプティミスティックな答を示していきます。

オススメ度:☆☆☆☆


愛に時間を (1) (ハヤカワ文庫 SF (581))
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愛に時間を (2) (ハヤカワ文庫 SF (582))
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愛に時間を (3) (ハヤカワ文庫 SF (583))
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