念力密室! ☆☆☆☆

(念力密室! / 西澤 保彦 / 講談社文庫 2004)

『チョーモンイン』シリーズの第一短篇集です。
『チョーモンイン』とは、正式には「超能力者問題秘密対策委員会」の略で、超能力を悪用した人物を取り締まる秘密国家組織のこと(らしい)。ここのエージェント(ただし見習)、着物と袴と白足袋が似合う天然萌え系美少女・神麻嗣子と、バツイチの売れないミステリ作家でマンションに一人暮らしの保科匡緒、警察官とは思えない美貌とナイスバディを併せ持つ能解匡緒(保科と同名です)警部の3人を主人公として、毎回、超能力がからんだ奇怪な事件を解決していく、というのが本シリーズのパターンです。しかし、事件とは別に、この3人の微妙な関係が、読者の興味を引きずっていくのが本シリーズの魅力でしょう。ふたりの匡緒は、互いに相手のことを憎からず想っていますが、立場上、なかなかそれを言い出せず、一方、純情な神麻さんは、ふたりの仲を取り持とうと必死になっています。しかも、神麻さんも能解警部も、保科のマンションの合鍵を渡されているという、不思議な状況。
特に今回は短篇集のため、普通は保科の一人称で進むのですが、能解警部が語り手になっている作品もあり、ふたりの微妙な心の動きが、鮮やかに描き出される結果になっています。さらに、保科の別れた妻・聡子までがからんできて、ますます前途多難に――。
ちなみに、タイトルにあるように、収録作品はすべて密室犯罪を扱っています。密室といえば、初期のミステリ作品では、どのような方法で密室にしたかという「ハウダニット」が主流だったわけですが、このシリーズの場合、超能力が使われるのが前提ですから、「ハウダニット」は意味をなしません(サイコキネシスを使えば、密室なんて一発ですから)。その代わり、なぜ密室にしなければならなかったのかという「フワイダニット」が、謎解きの中心になっています。
というところで、収録された6篇を紹介していきましょう。

「念力密室!」:第一長篇「幻惑密室」に先立って発表された、シリーズ最初の作品。3人の馴れ初めの記でもあります。酒を飲んで帰宅した保科は、自分の部屋に鍵とチェーンがかけられており、しかも中では見知らぬ男の他殺体が転がっていることに気付きます。翌日、袴姿のけったいな美少女(神麻さんですな)が現れ、保科がサイキックを悪用したと決め付けます。さらに、美人の能解警部の調査により、保科の部屋を除くマンションの全室に盗聴器が仕掛けられているのが見つかります。そして、殺されていた男は、保科の別れた妻・聡子の内縁の夫でした。

「死体はベランダに遭難する」:花火大会があった日の翌朝、ベランダで発見された青年の撲殺死体。奇妙だったのは、ベランダへの出口が、屋内側から施錠されていることでした。部下の女性刑事・英田とともに調査していた能解警部の前に、神麻さんが現れます。犯行があったと思われる時間に、ここで超能力が使われたというのですが・・・。

「鍵の抜ける道」:超能力が使われたことを検知した神麻さんが、現場と思われるマンションへ行くと、中で女性が死体となっていました。しかし、保科と能解警部を連れて戻ってみると、死体は消えており、後に離れた雑木林に捨てられているのが発見されます。神麻さんが発見してから、戻ってくるまでの間に運び出されたのは確かですが、犯人(?)は、なぜ超能力を使って現場を密室にしなければならなかったのでしょうか。

「乳児の告発」:鍵のかかった屋内では、殺された熟年男性(この家の主)の他に、この日の朝に誘拐された赤ん坊が生きたまま放置されていました。ここでも、サイコキネシスが使われた痕跡が残っていましたが、なぜ密室にする必要があったのでしょうか。

「鍵の戻る道」:保科の別れた妻・聡子は、ここ一週間、自分の留守中に何者かが部屋に侵入しているのに気付き、不安をおぼえて保科に相談してきます。神麻さんの調査で、超能力は使われていないことが判明し、容疑者(?)は、聡子が最近別れたばかりの、思い込みの強い大学院生の猿投(合鍵を持っている)に絞られます。ところが、後日、鍵のかかった聡子の部屋で殺されていたのは、猿投に想いを寄せていた女子大生・チエでした。

「念力密室F」:この作品は異色で、語り手は聡子です。しかも、聡子が見た謎めいた夢が、シリーズ全体の未来をほのめかしていますが、作者の言葉によれば、このようなラストは用意されていないとのこと。そういう意味では、「F」の意味はFinalではなくFictionなのかもしれません。

オススメ度:☆☆☆☆


念力密室!―神麻嗣子の超能力事件簿 (講談社文庫)
念力密室!―神麻嗣子の超能力事件簿 (講談社文庫)

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック