栄光のスペース・アカデミー ☆☆☆☆

(栄光のスペース・アカデミー / ロバート・A・ハインライン / ハヤカワ文庫SF 1995)

原作が出版されたのは1948年。もう半世紀以上も前のことです。
時は21世紀後半。人類は太陽系全体に版図を広げ、宇宙の治安を守る軍隊として「惑星間パトロール隊」が活躍しています。このパトロール隊は少年たちの憧れで、士官養成学校であるスペース・アカデミーには多くの希望者が押し寄せてきます。しかし、狭き門を通り抜けて、ようやく候補生になっても、厳しい訓練により大多数はふるい落とされ、任官できるのは一握りに過ぎません。
マットもパトロール隊員に憧れる青年のひとりで、なんとか二次試験を突破し、最終試験に臨むため、地球基地に出頭します。そこには、多くのライバルが集まっていました。生真面目なマットは、テキサス出身で冗談好きなジャーマン(愛称テックス)、金星生まれのオスカー、ガニメデから来たピートらと知り合います。翌日から待っていたのは、心身ともにズタズタにされる厳しい選抜訓練でした。古参候補生をリーダーとしてとる朝食の度に、歯が抜けるように仲間が減っていきます。しかし、励まし合いながら、4人は欠けることなく二次試験を突破します。
軌道上の訓練船ランドルフ号に移ってからも、昼夜を問わず苛酷な訓練は続きます。小型宇宙艇の操縦、船外活動、古参候補生との果てしないディベート・・・当初は激しいホームシックを覚え、休暇で帰郷したら戻ってくるのはやめようと決意していたマットですが、いざ実家へ帰ってみると、今やアカデミーが故郷となっている自分を発見するのでした。
4人は最終試験に揃って合格し、ガニメデへ向かうピートを除いた3人は、晴れて士官候補生としてパトロール艦アイス・トリプレックス号へ配属され、実務に就きます。アイス・トリプレックス号は、小惑星帯で消息を絶った僚艦パスファインダーを探索し大発見をした後、とんぼ返りして金星の赤道近くで発信された救難信号を調査に赴きます。副長サーロウ中尉の指揮で、3人の候補生は金星に降り立ちますが、着陸時の事故でサーロウ中尉は意識不明になり、着陸船は沼に沈んで、立ち往生してしまいます。金星で育ったオスカーは、水棲の金星原住民に助けを求めることを提案しますが――。
軍人養成学校に入学した青年の成長物語という点では、後に書かれた「宇宙の戦士」と似ています。しかし、解説で訳者の矢野徹さんも指摘しているように、この作品には「宇宙の戦士」のような戦争を肯定する思想はありません。逆に、宇宙海兵隊への転属を考えたマットに、上官は「宇宙海兵隊は、起こってしまった戦いを止めるために存在する。だが、惑星間パトロールは、戦いを起こさないために存在しているんだ」(←要約)と諭します。このことは、書かれたのが第二次大戦直後だという事実と無縁ではないでしょう。同じ士官候補生の訓練を描いていても、「宇宙の戦士」や、『シーフォート・シリーズ』(作者は違いますが)に比べて、このスペース・アカデミーの校風や候補生たちは、どこかおおらかでユーモラスです。

オススメ度:☆☆☆☆


栄光のスペース・アカデミー (ハヤカワ文庫SF)
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