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<<   作成日時 : 2017/10/29 19:03   >>

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(さなぎ / ジョン・ウインダム / ハヤカワ文庫SF 1978)

先日読んだ「アトムの子ら」と同じミュータント・テーマの佳作です。同じウインダムの作品「呪われた村」と、ある意味で表裏一体をなす作品かもしれません。

大規模核戦争で放射能に汚染された世界では、汚染を免れたわずかな地域で生き延びた人々が、中世的な生活を続けていました。ここラブラドールは、北と東は海に隔てられ、西と南に進むとワイルドカントリー(未開地方)と呼ばれる土地にぶつかり、その先にはフリンジ(外縁地方)と呼ばれる中程度の汚染地域が広がっています。それを超えた先にあるバッドランド(悪地)は、踏み込んだ者は二度と帰ってこない人跡未踏の土地でした。フリンジには、奇怪な姿をした人間を含むミュータントたちが暮らしており、時おり食料を求めて“人間”(聖書に記された姿かたちを持つ人々)が暮らす土地を襲ってきます。普通の人々が暮らす村でも、放射能を汚染を完全に免れているわけではなく、畸形の赤ん坊が生まれたり、奇妙な農作物が実ったりすることは珍しくありませんでした。そのような存在は“つまずき”と呼ばれ、“つまずき”だと判断された作物は、それが実った畑と共に焼き尽くされ、動物であれば殺されて焼かれます。人間の赤ん坊であれば、未開地方に捨てられるか、それを隠していた家族があるとすれば、家族ともども追放されてしまいます。“つまずき”は人間とはみなされず、見つけ次第に射殺しても、咎められることはなく、逆に神の教えを忠実に果たしたとして称賛されます。
ワクナックの村で、神の教えを狂信的に守る父親のもとで暮らすデイヴィッドは、幼いころから、不思議な建物が建ち並び、空飛ぶ機械に人々が乗って動き回る奇妙な都市の夢をたびたび見ていました。あるときデイヴィッドは、遊び友達のソフィーが足を怪我したことがきっかけで、ソフィーの足の指が6本あることを知ってしまいます。ソフィーの両親は、絶対に他人に言わないようデイヴィッドに約束させますが、鍛冶屋の息子のアランに目撃され、ソフィー一家は身を隠さざるを得なくなります。父に折檻されたデイヴィッドも自分が知っていたことを白状させられ、巡察隊に捕えられたソフィー一家は、未開地方へ永久追放されるのでした。
実は、デイヴィッドにも、他の子供たちと違うところがありました。他人の気持ちを敏感に感じ取ることができるばかりか、遠く離れた相手と意思を通じ合わせることができました――つまり、デイヴィッドにはテレパシーの能力があったのです。デイヴィッドばかりでなく、従姉妹のロザリンドをはじめ、ワクナックの近郊には合わせて9人も同じような能力を持った少年少女がいたのです。デイヴィッドは、船乗りで柔軟な考え方の持ち主であるアクセル叔父に自分の能力を話すと、叔父のアドバイスを受けて、他のテレパスたちと積極的に話し合い、互いに秘密を守るよう団結するのでした。テレパスのサークルのメンバーは、最年長のアンは13歳、アンの妹のレイチェル、考え深くて頼りになるマイケル、隣り同士のサリーとキャサリン、マーク、最年少のウォルターでしたが、ウォルターは事故で死んでしまいます。
6年間、テレパスたちは正体を隠しつつ成長していきましたが、ある日、生まれて間もないデイヴィッドの妹ペトラが小川に落ちたとき、世界をひっくり返すほどのテレパシーを発して、テレパス全員が現場に駆け付けるという事態を出来させてしまいます(まさに、「塔の中の姫君」のローワンのように(^^;)。全員を合わせたよりも強烈な精神感応力を持つペトラを教育し、暴走さえないようにすることが、兄であるデイヴィッドと従姉妹であるロザリンドの役割となります(この時点で、デイヴィッドとロザリンドは恋仲になっていました)。
やがて、団結していたテレパスの間に亀裂が入ります。アンが、こともあろうとソフィーが追放される原因となったアランと結婚すると言い出したのです。アンは反対を押し切って結婚しますが、マイケルをはじめとするテレパスは、いずれアンの能力がアランにばれてしまうだろうと心配していました。その後、アランが矢で射殺されているのが発見され、テレパスの誰かが犯人だと信じ込んだアンは、告発の手紙を遺して自殺してしまいます。その手紙は妹のレイチェルが焼き捨てたので事なきを得ましたが、ペトラの精神的暴走を防ぎきれないデイヴィッドとロザリンドは、巡察官に疑惑を持たれているのを感じていました。そして、マイケルの助言を受け入れ、いざという時には未開地方へ脱出する計画を具体化していきます。
ある晩、サリーとキャサリンが巡察官に捕まり、テレパシーでそのことを知ったデイヴィッドとロザリンドは、ペトラを連れて馬でワクナックを脱出します。追跡を受けながら(疑いを持たれていないマイケルが追跡隊に参加して、逐一、追跡隊の動向について情報を送ってくれています)、南西に向かって進むデイヴィッドたちには、ひとつの目的地がありました。ペトラだけに感じ取れる遥か遠方から届くテレパシーの持ち主が、救援を約束してくれていたのです。相手がいる場所は、ジーランドと呼ばれる二つの孤島だということでした。
未開地域の森の奥深くに達した一行は、フリンジからやって来た略奪隊に捕えられてしまいます。略奪隊のリーダーは、過去にワクナックを追放された、デイヴィッドの父の兄弟でした。集落に連れて行かれた3人のうち、女であるロザリンドとペトラは残され、男であるデイヴィッドは袋叩きにされたうえで密林に追放されますが、デイヴィットを介抱してくれたのは、なんと成長したソフィーでした。デイヴィッドはソフィーの協力で、ロザリンドとペトラを奪い返すと、ロザリンドの住む洞穴に隠れ、ジーランドからの救援を待ちます。一方、フリンジの住民は追跡隊と遭遇して蹴散らされ、三々五々、集落に戻ってきますが、マイケルやデイヴィッドの父を含む追跡隊も、間近に迫っていました。
そこへ、デイヴィッドの夢に出てきたのと同じ飛行機械が空から舞い降りてきます。ジーランドからの救援隊が危険を冒して、こんな遠方までやって来たのは、ひとえに史上最強のテレパスであるペトラを救い出すためでした。そて、ジーランドは、テレパスだけが暮らす土地―ペトラはもちろん、デイヴィッドやロザリンドにとっても新天地だったのです。

オススメ度:☆☆☆☆




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