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zoom RSS 破戒法廷 ☆☆☆☆☆

<<   作成日時 : 2017/09/02 22:47   >>

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(破戒法廷 / ギ・デ・カール / 創元推理文庫 1984)

作者ギ・デ・カールはフランスでは風俗小説家として著名で、本作は彼の唯一のミステリだそうです。シンプルですが密度の濃い、良質な法廷ミステリに仕上がっています。

弁護士生活45年のヴィクトル・ドリオは、他の野心ある弁護士が見向きもしない些細な軽犯罪ばかりを扱っており、まったく目立たない老弁護士でした。しかし、ドリオは弁護士の仕事が大好きで、どんな事件でも一切手を抜くことなく、誇りを持って真摯に仕事を遂行しています。弁護士会会長のミュニエが、そんなドリオを国選弁護人に選んだのは、センセーショナルかつ異常な殺人事件でした。実は、依頼を受けた優秀な弁護士2名が、この被告の弁護を断っていたのです。
その事件とは、次のようなものでした。
アメリカからフランスへ向かう大西洋横断汽船の船内で、前途有望なアメリカ人青年ジョン・ベルが殺されます。鋭いナイフで頸動脈を切断されており、現場には遺体とともに、血まみれの大男がベッドに腰を下ろしていました。男の名はジャック・ヴォーティエ――盲聾唖の三重障害を負いながらも、自伝的文学作品『孤独な男』を発表し、美人の妻もめとって、アメリカ一周の講演旅行を終えた帰りでした。現場にはジャックの血まみれの指紋が残り、自白もして、彼が犯人であることは間違いないと思われています。
弁護を引き受けたドリオは、弁護士志望の女子学生ダニエル(ドリオの弟子で、ドリオは彼女を“孫娘”と呼んでいます)に手伝ってもらい、関係者に連絡を取って、ジャックの生い立ちや受けた教育、生活態度などについて、地道に情報を集めていきます。最初に、サンテ刑務所の未決監房に収監されているジャックを訪ねたドリオは、危うくジャックに首を絞められらそうになります。しかし、ジャックの著書『孤独な男』を読んだドリオは、看守が“けだもの”と呼ぶジャックは、常人以上の知性の持ち主だと気付くのでした。
パリの比較的裕福な商人の家に生まれたジャックは、生まれついての三重苦で、子の息子を姉や両親はどう育てていいかわかりませんでした。まさに“けだもの”のように育ったジャックと唯一、不完全ながらコミュニケーションできたのは、女中の娘でジャックより年上の少女ソランジュでした(彼女は後に、ジャックと結婚し、ジャックが殺人を犯したとされる船旅にも同行していました)。やがて、ジャックのような障害児の教育で実績のあるサン=ジョセフ学院がジャックを預かり、学院長イヴォンや主治医デルヴォーの献身的な教育によって、指文字を使ってコミュニケーションすることを覚え、ついには本を書き上げることまで、ひとりでやってのけられるようになります。そして、学院長の心遣いによりヘルパーとして再会したソランジュと、ついには結ばれたのでした。
裁判が始まり、原告側弁護士ヴォワランややり手の次席検事ベルティエは、次々と証人を呼び出しては、ジャックが殺人を犯したことを立証していきます。まず、犯行が行われた商船ド・グラス号の船長、事務長、発見者の船室付きボーイ、検死を行った船医、フランスに到着したジャックを逮捕したル・アーヴル警察の警部、医学的・精神的にジャックを調べた医師たちが証言し、ジャックは並み以上の知能の持ち主であり、冷静に自分から犯行を自白したことが語られます。続いて、アメリカからやって来たベル青年の父親、ジャックの家族(両親と姉夫婦)、ソランジュの母親、サン=ジョセフ学院でジャックの友人だった盲人ジャンが、ジャックの生い立ちや性格などについて証言します。特に、自分から検事に証言を申し出たというジャンは、在学中、ジャックが納屋でソランジュを犯そうとし、証拠を消すために納屋に火を放ったという事件を生々しく証言します。
一方、ドリオが申請した証人は、イヴォン学院長、デルヴォー医師、気のいい修道士ドミニックなどですが、原告側の冷徹な論理を突き崩すには至りません。かえって、デルヴォー医師などは、結果的にジャックがベルを手にかけるにいたった有望な動機(ベルが美人のソランジュに言い寄ろうとしたため、妻を守ろうとして殺してしまった)まで提示してしまう始末でした。最後に召喚したソランジュ夫人の証言も、状況を覆すには至りませんでした。
しかし、最終弁論でドリオは、時に地道に論拠を積み上げ、時に大胆な論理をアクロバットを駆使して、かたくななジャックの心の壁を打ち砕き、彼が自白した本当の動機を引き出して見せます。そして、真犯人も鮮やかに指摘してみせるのでした……。

小説と映画の違いはありますが、読後感は映画「十二人の怒れる男」を見終わったときの感覚とよく似ていました。

オススメ度:☆☆☆☆☆




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