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zoom RSS 諜報指揮官ヘミングウェイ(上・下) ☆☆☆☆

<<   作成日時 : 2017/08/19 23:09   >>

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(諜報指揮官ヘミングウェイ 上・下 / ダン・シモンズ / 扶桑社ミステリー 2002)

SF(「ハイペリオン」シリーズ)、ホラー(「サマー・オブ・ナイト」「殺戮のチェス・ゲーム」など)、冒険ミステリ(「ダーウィンの剃刀」)など、ジャンルを超えて傑作を出し続けているシモンズですが、本作は歴史ミステリと謀略アクションを融合させた大作です。

第二次世界大戦が始まり、まだ枢軸国側が優勢を保っていた1942年春、FBIの特別捜査官ジョゼフ・ルーカスは、FBI長官J・エドガー・フーヴァーに直々に呼び出され、極秘任務を命じられます。それは、キューバへ飛び、同地に在住しているアメリカ人作家アーネスト・ヘミングウェイに接近して、彼の一切合切を報告せよというのです。長官の話では、ヘミングウェイは現地の友人知人を集めて、対独諜報活動組織を作り、祖国に貢献しようとしているとのことでした。キューバのアメリカ大使館はヘミングウェイのいわば“素人スパイ組織”を承認し、援助のしるしとしてプロの諜報工作員を送り込み、全面的に協力させる決定を下しています――ルーカスは、その“プロの工作員”としてヘミングウェイのもとへ堂々と乗り込むことになります。フーヴァーがルーカスを選んだ理由は、他のFBI工作員にはない長所(?)があるためでした。それは、命令されれば躊躇うことなく殺人を実行できる、という点でした。
キューバへ向かう機上で、ルーカスは英国海軍諜報部に所属するフレミング中佐(のちに007シリーズを書くイアン・フレミングです)と乗り合わせますが、当然ながら、これを偶然とは考えませんでした。また、現地の連絡員として接触したデルガドという男は、一筋縄でいかない底知れぬ凄みを感じさせる人物で、イニシャルでしか知られていないFBI伝説の特殊捜査官その人ではないかという印象すら感じさせます。ルーカスは、ヘミングウェイに関する報告書を定期的にデルガドに渡すことになっていました。また、ルーカスの行動は、他のアメリカの諜報組織の注意も引いているようで、戦略事務局(OSS)幹部のウォレス・フィリップスも密かにルーカスに接触してきます。
現在、ヘミングウェイはハバナから20キロほど離れた丘の上の農園“フィンカ”に、3番目の妻マーサと一緒に住んでおり、友人知人を招いてはパーティーを楽しんでいました。ルーカスは、パーティーでゲーリー・クーパーやイングリッド・バーグマン、マレーネ・ディートリッヒといった映画スターたちにも引き合わされます。そのほかの友人たちは、みなヘミングウェイの諜報活動組織クルック・ファクトリーのメンバーや協力者でした。ヘミングウェイの持ち船“ピラール号”の副長、スポーツマンで富豪のゲスト、一等航海士フエンテス、ヘミングウェイの主治医ソトロンゴ、一流のハイアライの選手イバールシア兄弟などです。酒に酔って盛り上がり、隣家にロケット花火を打ち込みに出かけたヘミングウェイたちですが、大騒ぎのさなか、何者かに狙撃された(弾は外れました)ことにルーカスは気付きます。ヘミングウェイの行動を、単なる作家の気まぐれかお遊びと考えていたルーカスですが、考えを改めざるを得ませんでした。ピラール号で腕試しの航海に出た一行は、ドイツのUボートと、それに接触しようとしていたと思われる豪華船サザンクロス号を目撃します。
数日後、事態をさらに深刻なものにする事件が発生します。地元の売春宿で、客の男が殺されているのが発見されたのです。男の相手をしていた娼婦マリア(事件の際は、浴室に逃げ込んで鍵をかけて隠れていました)の話によると、男を殺したのはキューバ国家警察のマルドナード警部補でした(キューバの警官は、公式の任務以外にも、金のために様々な“内職”をこなしており、今回もそうだと思われます)。ヘミングウェイは、マリアを“フィンカ”に匿うことにしますが、部屋の関係で、マリアはルーカスの部屋に同居することになります。任務の性質上、女性に対してはストイックな態度を崩さないルーカスですが、様々な事件が起きるにつれ、ストレスが溜まったルーカスと他に頼るもののないマリアが結ばれるのは、自然な流れでした。
被害者コーラーは、サザンクロス号の無線技士でした。彼が持っていたバッグの隠しポケットから、意味不明の英数字が書かれた手帳が発見され、ルーカスは、それがドイツ諜報部が使う暗号に他ならないことに気付きます。暗号のキーとなる書物を探すため、ルーカスはヘミングウェイに進言してクルック・ファクトリーのメンバーに陽動作戦を展開させ、サザンクロス号に潜入します。首尾よく書物は盗み出せたものの、暗号を解くのが苦手なルーカスは、OSSのフィリップスに協力を求め、書かれている内容を解き明かします。どうやら、サザンクロス号はドイツ軍諜報組織アプベーアと協力しており(工作員が乗り組んでいる?)、ブラジルに潜伏している工作員からの通信を本国へ転送しているようでした。ヘミングウェイは大胆にも、サザンクロス号をチャーターしているドイツ人実業家シュリーゲルと骨董品鑑定家だという美女ヘルガを“フィンカ”でのパーティーに招待しますが、相手も尻尾を出しません。
やがて、解かれた暗号文から、近々ドイツの工作員がUボートでキューバに上陸するという情報や、破壊工作のためアメリカ本土に上陸を試みるといった情報が見つかります。
ヘミングウェイは、キューバを訪れた十代の息子二人、グレゴリーとパトリックもピラール号に乗せ、工作員が上陸予定の島を見張りに赴きます。しかし、潜水艦が隠せると言われた洞窟はもぬけの殻で、調査は空振りに終わり、戻ってみると、クルック・ファクトリーの調査員のひとりとしてマルドナードやデルガド(ルーカスはもはや、自分の連絡員すら信用していませんでした)を尾行させていたサンティアゴ少年が、コーラーと同じ手口で殺されていました。仇をとるべく、慎重に捜査を進めるルーカスは、デルガドを尾行し、彼がナチス親衛隊の突撃隊長ベッカーと密会している現場を目撃します。しかし、デルガドがドイツへ寝返っているのか、ベッカーがアメリカへ寝返っているのか、あるいはどちらかが(もしかすると双方が)二重スパイなのかは、わかりません。ルーカスはシュリーゲルを誘拐して拷問を加え、口を割らせますが、肝心の点は明らかになりませんでした。
新たな暗号通信を傍受したルーカスは、工作員の上陸地点を突き止め、ヘミングウェイと二人きりで現場を抑えに向かいますが、上陸してきたドイツ兵2名は、何者かに狙撃されて死んでしまいます。さらに別方式の暗号通信を苦労して解読したルーカスは、ヘミングウェイと自分を亡き者にするため、ドイツ軍の工作員2名がキューバに潜入していることを知ります。そのうち一人に見当をつけたルーカスは、相手と対決して屈服させますが、相手は拘束した場所から行方をくらませてしまいます。さらなる罠がヘミングウェイとルーカスを襲い、ふたりとも死の瀬戸際まで追い詰められますが――。

ルーカスとわずかな登場人物以外は、すべて実在の人物であり、クルック・ファクトリーに関するヘミングウェイの行動や、作中に描かれたエピソードは、ほとんど事実だということには驚かされます(作者シモンズはそう書いています。ヘミングウェイの生涯については疎いため、本当にそうかどうかはわかりませんが(^^;)。

オススメ度:☆☆☆☆




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