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zoom RSS レダ(1〜3) ☆☆☆☆

<<   作成日時 : 2017/07/22 23:02   >>

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(レダ 1〜3 / 栗本 薫 / ハヤカワ文庫JA 1988)

栗本さんの比較的初期のSF長篇。「メディア9」の直後、1981年夏に連載が開始されています。

未来の地球には、各地に巨大都市が建設され、そこでは住人たちが完全に「自由」な生活を謳歌しています。子供たちはすべて試験管ベビーとして生まれ、早くからユニットと呼ばれる個室を与えられ、得意な分野や興味・嗜好に合わせて、様々なギルドに属し、好きな職業に就くことができます。複数のパートナーの選択も自由で、成人すればピンク・タワーへ赴いて安全なドラッグを服用し、ありとあらゆる形態の性行為を愉しめます。都市はビューティフルピープルと呼ばれる幹部たちによって、気象や気候もすべて操作され、万人の平穏と幸福のために運営管理されています(こうして見ると、先日読んだシルヴァーバーグの「内側の世界」とよく似た設定ですが、あちらはプライバシーが皆無なのに対し、こちらは個人のプライバシーが厳密に保護されているという違いがあります)。さらに特徴的なのは、自分が属したいギルドがなければ、新たにギルドを作ることもでき、都市の秩序やルールに反した行動をとる人間さえ、紊乱者(ディソーダー)として存在を認められていることです(この点でも、同じような存在“逆上派”が問答無用で“処理”されてしまう「内側の世界」と大きく違っていますね)。
そのような都市の一つ、極東に位置するファーイースト30で暮らす15歳のイヴは、成績も平均以下で特に目立った才能もなく、将来どんな職業に就きたいかについても具体的なイメージが湧かず、ただ夢想にふけるのが好きな孤独な少年でした。彼は、がらんとした南A16エリアに出て、風を感じながら都市を眺めるのが好きでしたが、このお気に入りの場所で不思議な女性レダに出会ったことから、運命が大きく変わることになります。紊乱者の中でも型破りなレダは、イヴよりも20歳は年上のはずなのに、体形は少女のようで、言動はエキセントリックで気まぐれ、感情の起伏が激しく、次の行動の予測がまったくつきません。最初は当惑し、抵抗し、恐怖すら感じるイヴですが、自分にはないものばかり持っているレダに惹かれ始め、ついにはレダの家を訪れるようになります。
レダの暮らすコテージも、型破りでした。都市ではイヴのような未成年もユニットで独りで暮らすのが常ですが、レダはアウラという名の成熟した女性と共同生活しており、さらに驚くべきことに、この時代には絶滅してしまった犬までが存在していました――このファンという犬は単なる飼い犬ではなく、遺伝子改変を加えられて人工培養された知性を持つ哲学犬で、人間以上の知性と考え深さを持ち、知的な会話を楽しむこともできます。さる実験のために生み出されたのですが、実験の終了後、“処分”されるところをアウラとレダに引き取られ、ここで暮らしているのでした。ファンは、これ以降、イヴにとってメンターのような貴重な存在となっていきます。
また、レダの家には、スペースマンのブライまでが定期的に訪れてきます。この時代、地球の都市社会を捨てて宇宙に出ていった人類は銀河で別の文明を築き、銀河政府として地球とはつかず離れずの微妙な関係を保っていました(このあたり、アシモフの「鋼鉄都市」などの影響を感じます)。地球上の都市住民とは全く異なるメンタリティ、ライフスタイルを持つスペースマンたちは地球人からは“エーリアン”とすら呼ばれ、市民レベルでの交流はほとんどありませんでしたが、レダもアウラも(常識人に見えるアウラも紊乱者だと知って、イヴは驚きます)ブライを受け入れていました。そして、ニンフォマニア的な性格を持つレダが、アウラとの同性愛、ブライとの乱暴なセックスを愉しんでいることを知ったイヴはショックを受けますが、ファンに根気良く説明され、“大人の事情”というものを理解するようになるのでした。
こうして紊乱者という存在と、その存続を許すシティの制度に関心を持ったイヴは、指導員のラウリに様々な質問をし、そういうふうに変わったイヴに、ラウリも関心を持つようになって、ついにラウリはイヴに対し、パートナーになってほしいという提案(プロポーズ)を申し入れてきます。ところが、このことは、ラウリのパートナーになるのは自文だと信じ込んでいた少年ミラを激昂させ、ミラはイヴに対して脅迫と暴力行為に出ます。給水塔のてっぺんでイヴと会話した後、ミラは塔から身を投げて命を落としますが、この事件は都市の運営幹部に大きな動揺を与えました。
こうして、イヴは事情聴取のために呼び出され、現市長のデイマーや、次期市長の呼び声高い美女L・Aの知己を得ることになります。杓子定規にシティを運営しようとするデイマーは柔軟性に欠ける役人タイプですが、スペースマンとの外交担当でもあるL・Aは、謎めいた妖艶な態度で、イヴに一目置く態度を示し、レダやアウラに関しても思うところがあるようでした。
ある日、レダに強引に誘われたイヴは、ピンクタワーへ連れ込まれ、非合法のセックス・ドラッグを服用して、レダと行為に及んでしまいます(というか、レダに手籠めにされた(笑)というほうが正しいでしょう)。レダにとっては、自分の欲望を満たす一手段で、アウラやブライとの行為と同質のものでしたが、相手となったイヴはもちろんのこと、アウラにとっても、それはショックな出来事でした。まだ子供(イヴの年齢では、まだ性に関する行為は禁じられています)のイヴに愛人を寝取られた(!)アウラは嫉妬と悲しみに狂い、イヴに心の内を赤裸々にぶちまけるのでした。そして、禁を破ったイヴは、自分も紊乱者になる決意を固めます。ところが、それを聞いたレダは激しく取り乱し、行方をくらませてしまいます。アウラに非難されたイヴは、ファンと一緒にイヴを探しに出ますが、おなじみの南A16エリアでカートを暴走させていた若者グループと出会い、ファンはカートにはねられてしまいます。それを目撃したレダは、工事用の火炎弾を使って若者たちを死傷させ、逮捕され幽閉されてしまいます。
イヴはデイマー市長やL・Aに働きかけてレダを助けようとしますが、市民の間には動揺が走り、レダをリンチにかけようという市民たちが、暴徒となって集結をはじめ、鎮圧に出たロボット車両を破壊するなど、信じられないような暴力的行動に出ます。失脚の淵に追い詰められたデイマーは、レダを生贄として市民に差し出す動きに出ます。レダは収容されていた病院から姿を消し、イヴとアウラは必死にレダの行方を探し始めます。レダを助力すべく宇宙から降下してきたブライも協力し、なんとかイヴとアウラはレダを見つけることに成功しますが、デイマーから嘘を吹き込まれたレダは、完全に理性を失っていました。そして――。
レダの事件をきっかけとして、地球市民と銀河政府のスペースマンとの間に新たな展望が開け、イヴはその中心人物となって、新たな未来に向かって歩き始めるのでした。

下で紹介している旧ハヤカワ文庫版では、1〜3巻のカバーイラストはそれぞれ、いのまたむつみさんが描くレダ、アウラ、イヴの肖像が飾っています(レダとイヴは、作中の描写のイメージと少し違う気がしますが(^^;)。また、本作で語られるイヴの独白は、このあとも様々な栗本作品で、形を変えて語られる普遍的な少年・青年の成長に伴う疑問や苦悩を最もストレートな形で表していると言えます。

オススメ度:☆☆☆☆




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