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zoom RSS アンダー・ユア・ベッド ☆☆☆

<<   作成日時 : 2017/07/19 23:15   >>

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(アンダー・ユア・ベッド / 大石 圭 / 角川ホラー文庫 2003)

主人公の三井直人は、まったく目立たず、友人もなく、世間に忘れられ、埋もれている30歳の青年でした。裕福な一家の次男として生まれましたが、両親は優秀な兄を溺愛しており、兄が大学生の時に急逝したこときっかけに家庭は崩壊し、両親は離婚――直人は母親と一緒に実家を出て、母親の愛人と3人でニートとして暮らしていました。
ところが、2年前のある日、エレベーターの中に偶然漂っていた香水の香りを嗅いだことで、大学時代の記憶が生き生きと蘇ってきます。ささやかな好意を寄せていた美しい同級生、佐々木千尋のこと、たった1回だけ喫茶店でマンデリンを飲みながら、趣味のグッピーについて語り合った記憶が――。衝動的に興信所に電話した直人は、千尋が現在何をしているかを短期間のうちに突き止めます。
新潟出身の千尋は大学卒業後、故郷には帰らず都内の小さな事務機器販売会社に就職し、浜崎健太郎という同僚と職場結婚して娘を一人もうけ、現在は湘南のはずれ平塚市の海辺に近い一戸建ての借家で専業主婦をしていました。浜崎家の周辺を歩き回り、直人はついに初恋の人の姿を目にしますが、化粧っ気もなくやつれ果てた千尋の様子に驚きます。直人は家を出て千尋の家を見通せる場所にあるビルを借り、1回を使って趣味を生かした熱帯魚店を開き、生計を立てつつ千尋の家を見張り始めます。望遠レンズで覗いているうちに、千尋が夫・健太郎の激しいDVにさらされていることがわかってきました。たまたま店を訪れた千尋(もちろん千尋には直人の記憶などなく、直人は初対面の熱帯魚屋の主人に過ぎません)にグッピーをあげる約束をした直人は、浜崎家を初めて訪れると、勝手口の合い鍵をこしらえ、盗聴器を仕掛け、本格的なストーカーとして千尋の生活を間近から見守り始めます。そうして明らかになった千尋の生活は、悲惨なものでした。
千尋の夫・健太郎は、一見してさわやかでハンサムなスポーツマンタイプで、人当たりもよく、会社でも人望がありましたが、家では些細なことに腹を立てて暴力を振るうサディストでした。健太郎自身、父親に虐待されて育っていましたが、それは必要な躾だったと思い込んでおり、自分も父親と同じように妻を従順に躾けなければならない、それこそが家父長としてのあるべき姿だと考えています。こうして、性的なものを含め日常的な暴力(肉体的にも精神的にも)に怯える千尋は、一人娘の幼い木乃美に愛情を注ぐこともできず、夫に抵抗する気力もくじかれ、すっかり隷属してしまっていました。
臆病な直人は、千尋を救うこともできず、留守宅に忍び込んではベッドの下に隠れたり、千尋の使ったシーツにくるまったり、千尋にあげたグッピーの水槽を手入れしたり、千尋の内職をひそかに手伝ったりするばかりでした。自分の存在を千尋に伝えようとすることもありませんでしたが、幼い木乃美だけは直人の存在に気付き、両親よりも直人に懐いていました(もっとも、まだまともにしゃべれないため、当面は直人の存在が露見することはありませんでしたが)。
健太郎の暴力はますますエスカレートし、ついに耐えきれなくなった千尋は、木乃美を連れて家を逃げ出します。それを後押ししたのは、直人が千尋の財布に忍び込ませた5万円の現金でした(健太郎が生活費を管理しているため、千尋には自由になる現金はありませんでした)。ホテルに潜伏して離婚を考える千尋ですが、ちょっとしたミスから健太郎にホテルを突き止められ、否応なく家に連れ戻されてしまいます。怒りに任せた健太郎の抑えの利かない暴力が千尋を遅い、生命の危険すら感じ始めたとき、盗聴マイクで状況を知った直人が入り込んできます。直人はスタンガンで健太郎に立ち向かいますが――。

「ストーカー」=「犯罪者」=「悪」という図式を、「DV」という要素を介在させて逆転させ、登場人物全員が何らかの形で「病み、闇を抱えている」状況(健全なのは木乃美だけでしょう)を描いて、陰惨な内容の割には読後感がさわやかな(笑)サイコホラーに仕上がっています。

オススメ度:☆☆☆




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