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zoom RSS 消えた少年たち(上・下) ☆☆☆☆

<<   作成日時 : 2017/06/24 21:54   >>

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(消えた少年たち 上・下 / オースン・スコット・カード / ハヤカワ文庫SF 2003)

SF文庫から出ていますが、SFではありません。ジャンルを考えれば、ミステリ、ホラー、ダークファンタジーのどれにも該当するように思いますが、何よりも“家族の人間ドラマ”だと言えます。これは、父の新たな仕事のために新天地に引っ越したモルモン教徒(作者カードもモルモン教徒であることは有名です)の一家が過ごす1年間を濃密に描いた物語です。

ステップ・フレッチャーは32歳。大ヒットしたコンピューターゲームソフト“ハッカー・スナック”のプログラマーですが、ブームが過ぎたために収入が激減し、新たな職に就くために、インディアナ州からノースカロライナ州の町ストゥベンに一家で引っ越すことになります。妻ディアンヌ(妊娠5ヶ月)と、小学2年生の長男スティーヴィー、4歳の次男ロバート、2歳の長女エリザベスを車に乗せ、ステップは安い一軒家の借家にたどり着きます。子供たちの世話をしながら荷物をほどくのも大仕事でしたが、モルモン協会のメンバーで気のいいジェニーや、引退して暇を持て余している大家(正確には大家の父親)のバッピー老人などが手助けを申し出てくれます。以降もジェニーはディアンヌの相談相手として、またバッピーは庭の手入れや家の修理などを無料でしてくれて、助けになってくれます。
ステップの就職先はIT企業(当時はそんな呼び方はありませんでした。なんせWindows以前の時代です)エイト・ビッツ社――家庭用の安価なコンピューター(ワープロとゲームソフトがメイン)の製造と販売で大きくなったメーカーで、ゲームプログラマーとしてはビッグネームのステップが入社するのは画期的なはずでした。しかし、ステップに与えられた仕事はマニュアル作成のみで、直属上司のプログラミング部門の責任者ディッキー(社長レイ・キーンの相棒で共同経営者)からは、プログラマーの仕事には一切口を出さないよう厳命されます。ところがそれは表向きのこと、ステップはディッキーにばれないように、プログラマーたちにアドバイスする任務を与えられますが、隠し事が嫌いなステップはストレスを溜めることになってしまいます。それでも、20歳そこそこの天才プログラマー(エイト・ビッツ社のヒット作のほとんどを手掛けています)ギャロウグラスのサポートもあり、なんとか仕事を続けようとします。なにしろ、ローンの支払いのためには同社から受け取る年俸3万ドルが、どうしても必要なのでした。
一方、引っ込み思案のスティーヴィーは新たな学校になじめず、日に日に元気をなくしていき、弟や妹とも遊ばず、スコッティやデヴィッドといった名前の空想の男の子たちと遊ぶふりをしているようでした。学校でのことをなかなか話そうとしないスティーヴィーから、ステップとディアンヌが聞き出したのは、スティーヴィーが登校初日からクラスの大勢にいじめられ、しかも担任教師のミス・ジョーンズがそれを止めるどころか焚きつけていることでした。おまけに、校長から一等賞をもらったはずのスティーヴィーの自由研究の成績が改ざんされていることも判明します。怒り心頭に発したステップは学校へ乗り込んでミス・ジョーンズと対決し、彼女を学校から“たたき出す”ことに成功します。いじめ問題は解決したはずですが、その後も空想の友人たちと遊ぶスティーヴィーの習慣は続き、時が経つにつれ、その人数が増えてくるのでした。
ステップとディアンヌも、地元のモルモン教徒のコミュニティに溶け込もうと、努力と続けていました。できるだけ関わり合わないようにとジェニーから忠告されていた独善的なシスター・ルシール、自分は特別な存在で神に取って代わる選ばれしものだと考えているリー少年など、“困ったちゃん”(笑)とも波風を立てないように付き合わなければなりません。ふたりは切れかけるたびに夫婦で納得いくまで話し合い(喧嘩すれすれになることもしばしば)、なんとか難局を切り抜けていきます。
追い打ちをかけるように、フレッチャー家はたびたび怪異に襲われます。コオロギの大群が床中を這いまわったり、無数のブユが飛びまわったり、メクラグモの群れが入り込んだり、コフキコガネの群れが網戸にびっしり張り付いたり――怪異にしてはワンパターンな気もしますが(^^; また、何者かが脅迫めいたレコードを送り付けてきたりもします。実際、考えてみれば、ステップやディアンヌが悪いわけでもないのに、フレッチャー家に恨みを持つ者はいくらでもいました。学校を辞めさせられたミス・ジョーンズ、一家が自分の思い通りにならないことに苛立つシスター・ルシール、部下であるステップに逆らわれてばかりのディッキー、子守をしてあげると何度も申し出ているのに断られ続けているギャロウグラス(ステップは、この申し出が単なる親切心だけではないのではないかと疑っています)、自分は神だと信じて徴発してくるリーなど……。
スティーヴィーの空想の友人たちはますます増え、ついにステップとディアンヌは、息子を精神科医に診せることにします。相手は、リーの母親(モルモン教徒ではない)ウィークス医師ですが、個別面接を2ヶ月繰り返しても、明確な診断や治療法すら明かしてくれず、挙句の果ては、両親の教育法に問題があるというお決まりの議論に落ち着きそうになります。そんな中、ストゥベンの町で頻発していた男の子の失踪事件が新聞の一面に載り、それを見たディアンヌは愕然とします。初めて公開された“消えた少年たち”の名前は、スティーヴィーの空想の友人たちとまったく同じだったのです。悩んだ末、ステップは警察に連絡し、柔軟な頭の持ち主ダグラス刑事は、一笑に付すことなくスティーヴィーの話を聞いて、捜査の参考にすることを約束します。
一方、エイト・ビッツよりもはるかに大きいアガメムノン社への転職を決意したステップはディッキーに辞表を叩きつけ、臨月に至ったディアンヌは三男ジェレミーを生み落とします。ですが、ジェレミーは痙攣発作が止まらず、新生児治療室に収容されてしまいます。
クリスマスが巡ってきたとき、スティーヴィーは自分の命を懸けて、少年連続失踪事件の犯人を暴き、一家は新たな年、新たな生活を迎えることになるのでした。

作品の冒頭、二重人格者と思われる犯人の内面が数ページにわたって描かれており、この犯人が誰なのかというのが、一つの焦点になっていますが、そういったミステリ的興味は本作の本筋にあらず、作者カードが本当に描きたかったのは、モルモン教徒として一本筋の通った生き方を貫こうとするフレッチャー一家の葛藤でしょう。その意味では、スティーヴン・キングの作品と同じリアリティあふれるホラーと言えます。

オススメ度:☆☆☆☆




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