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zoom RSS 内側の世界 ☆☆☆

<<   作成日時 : 2017/06/22 21:42   >>

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(内側の世界 / ロバート・シルヴァーバーグ / サンリオSF文庫 1986)

シルヴァーバーグ中期の長篇です。代表作の一つ「時間線を遡って」(新訳が「時間線をのぼろう」のタイトルで創元SF文庫から出ましたね)の2年後、ネビュラ賞受賞の「禁じられた惑星」と同年(1971年)に発表されています。

時は24世紀後半。地球の人口は750億を超えていますが、食料生産技術やリサイクル技術、エネルギー革命などのおかげで、人類は飢えることもなく、子作りに励んで(笑)います。地上のあちこちには、かつての大都市圏を中心に、“都市体”と呼ばれる高層ビルが建ち並び、100〜200に及ぶビルの集合体は“住塔星座”と呼ばれています。一つ一つの“都市体”は1000階から成る高さ3000メートルの細長い高層建築で、ビル一つに平均80万人〜100万人が暮らしています。また、一つの“都市体”は100〜150階ごとに別々の都市名(舞台となる“都市体116号塔”では、レイキャヴィーク、コロンボ、ナイロビ、エディンバラ、シカゴ、サンフランシスコ、ピッツバーグ、ワルシャワ、バーミンガム、上海、シアトル、ボストン、ルイヴィルなど25都市)が付けられており、各都市にはそれぞれ職業を同じくする人々が住んでいます。当然ながら(?)下層へ行けば行くほどブルーカラー的な職業が増え、中間層には技術者、学者、芸術家など、そして上層部は都市体を運営管理する官僚たちが占拠しています。“住塔星座”と“住塔星座”の間には、ほぼオートメーション化された集約農業で食料を生産している広大な農業地帯が広がり、“都市体”とはまったく異なる文化・言語・風俗を持つ人々の共同体が点在していますが、“都市体”の生活者は一生をビル内で過ごすため、これらの共同体と交流することはありません。
特徴的なのは、“都市体”住人の間では、プライバシーや性的タブーというものが一切ないことです。子供たちは8〜9歳で初体験し、12〜13歳で結婚して家庭を持ち、子供の数は多ければ多いほど評価されます。住宅には鍵をかけることはなく、壁や仕切りなどというものも存在せず、着替えもトイレもセックスさえも、大っぴらに行われます。完全なフリーセックスで、ストレスを溜め込まないための“夜歩き”という習慣が奨励されています。これは公認の“夜這い”で、行き当たりばったりに他人の部屋を訪ね、そこの住人と(同性・異性を問わず)自由に性交渉を行うわけです。断ることは人間として重大なマナー違反と見なされます。“夜歩き”という名の通り。夜間に行うのが原則ですが、昼間に同様の行為に及んでも咎められることはありません。ついでに言えば、「産児制限」や「避妊」などという言葉は、恐ろしく罰当たりな禁忌語とされています。
大部分の人々は、このような生活を当然のことと考え、謳歌していますが、ごくまれに、これらの習慣を否定する反動的な人々が出現します。このような人々は“逆上派”と呼ばれ、見つかり次第ダストシュートに投げ込まれ、地下の焼却炉でエネルギーに転換されてしまいます。また、わずかでも“都市体”の主義や習慣に疑問や不安をおぼえた者は、“治療”のため慰藉官や道徳技師のもとへ行かなければなりません。

本作では、上記のような“都市体”の一つ116号塔で、様々な人々が織りなす群像劇が、オムニバス形式で展開されます。各章の主人公は別々ですが、物語が進むにつれ、モザイクノベルのように各登場人物が微妙に絡み合ってきます。また、先ほど紹介したように住民たちは非常に早熟なため、登場人物の多くは10代から20代です。
第1章:799階(上海)に住む社会算定学者チャールズ・マタンは、金星のヘル市から地球の“都市体”を研究にやってきたゴートマン博士をホームステイさせ、都市体の各所を案内することになります。案内中、“逆上派”のひとりが廊下で暴れているのに遭遇したマタンはストレスが溜まり、妻のプリンシペッサにゴートマンの夜のお相手(笑)を任せると、“夜歩き”に出るのでした。
第2章:735階(シカゴ)に住むメムナン(15歳)とオーリア(14歳)は、結婚して2年が経っていましたが、いまだに子供ができません。子供がない若夫婦が、新たに建設された“都市体158号塔”に送られるという噂を聞き、不安になったオーリアは、将来の幹部候補として嘱望されている同い年のシーグマンド・クルーヴァ(当然ながら二人は以前に関係を持っていました)を頼り、新都市体への移住者リストから外してほしいと懇願しますが――。
第3章:一流の音楽演奏家ディラン・クライムズ(17歳)は、530階(ローマ)の音響センターで盛大に演奏を済ませたあと、興奮を冷ますために“夜歩き”に出ます。多重人格剤を服用してセックスを始めたディランは、116号塔のすべての住人の人格を融合を果たし、ありとあらゆる人間模様を垣間見ます。
第4章:761階(上海)に住む歴史学者ジェイスン・ケベトは、毎日のように185階(ピッツバーグ)にある史料館に出かけて20世紀の性的タブーを研究しています。実はジェイスンは、妻のマイケラが双子の兄マイケルと密かに関係しているのではないかと考え、嫉妬をおぼえる一方、自分はシーグマンドの妻ママラン(15歳)に片想いしていました。嫉妬も片想いも、この時代にはあり得ない感情で、そのためジェイスンは自分が“逆上派”になってしまうのではないかと心配しています。20世紀から24世紀に至る性意識の流れを研究するうちに、ジェイスンは、自然淘汰によって都市体の生活に耐えられる遺伝子を持つ人間だけが生き残り、“逆上派”や自分のような人間は“先祖返り”なのではないかという仮説にたどり着きます。
第5章:シーグマンドはまだ15歳ですが、すでにルイヴィル(最上階)に住む都市体の運営幹部たちから重用されていました。自身も、数年のうちにはルイヴィルに住めるようになるだろうと予想しています。重要人物たちのパーティに呼び出されたシーグマンドは、将来の都市体支配者にふさわしいかどうか見定められることとなりますが――。
第6章:マイケラの双子の兄マイケル(23歳)は、何時の頃からか、都市体を出て世界を見てみたいと思うようになっていました。ついに衝動を抑えきれなくなったマイケルは、インターフェース技術者という職業を利用して外出パスを偽造し、まんまと都市体を抜け出すことに成功します。ひとり旅を続けるマイケルは、広大な農地の果てで、まったく異質の人々に捕えられ、農業地帯を管理する共同体に連れて行かれます。唯一、都市体の言葉を話せる女性アーサの世話を受け、共同体で暮らしていくうちに、マイケルはアーサに欲望をおぼえ、都市体のマナー通りにアーサを押し倒しますが、その行為はここでは強姦罪にあたるものでした。
第7章:都市体の運営幹部たちが準備した試験に合格しなかったシーグマンドは、絶望して都市体の最下層をさまよい、様々な階層をランダムに訪れ、ついには神々に会おうと試みます。

オーウェルの「1984年」や、ハリスンの「人間がいっぱい」などと設定は似ていますが、どこか違う、不思議なテイストのSFです。

オススメ度:☆☆☆





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