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zoom RSS アトムの子ら ☆☆☆☆

<<   作成日時 : 2017/06/17 22:44   >>

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(アトムの子ら / ウィルマー・H・シラス / ハヤカワ文庫SF 1981)

ヴォークトの「スラン」やステープルドンの「オッド・ジョン」、スタージョンの「人間以上」などの系譜に連なる、ミュータント・テーマの“隠れた名作”だそうです。作者シラスが書いたSFは、この1作だけとか。ですが、女性らしい細やかな作風で、ヘンダースンの『ピープル』シリーズが好きなかた、「オッド・ジョン」や(テーマは違いますが)「呪われた村」のラストに釈然としない思いを抱いたかたには、お勧めの作品です。

精神科の医師ピーター・ウエルズは、ベテラン教師ミス・ペイジの依頼を受けて、13歳の少年ティモシーの心理テストをすることになります。平均的な成績のティモシーですが、学校ではどこか他の子供たちと異なるところがあり、親しい友人もいないといいます。最初はテストを嫌がっていたティモシーですが、ウエルズ医師が信頼できる相手とわかり、次第に心を開いていきます。驚いたことに、ティモシーの知能指数は並みの天才を遥かに超えていました。彼は幼いころから自分の能力に気付いていましたが、過保護でありながら厳格な祖母に育てられたため、早いうちから、その能力を見せると周囲との軋轢が生まれることを悟り、家庭でも学校でも隠していたのでした。しかし、ティモシーは匿名で出版社に評論や小説を送り、その印税を学費に充てて通信教育で大学レベルの学問を収めています。ウエルズはティモシーの祖母に話を聞き、ティモシーの両親が原子力研究所の爆発事故で放射能に被曝し、息子が生まれた直後に死亡したことを知ります。ティモシーの天才的才能の原因が、放射能の影響による突然変異であることは、まず間違いありませんでした。この事故では、他にも多くの被曝者が出ていたため、ティモシーと同じ運命の子供たちが他にもいるはずでした。
1年後、ティモシーとウエルズ医師は、ティモシーレベルの天才にしか真意がわからない新聞広告を出して、同類の子供たちを探し始めます。何人かから、ティモシーにしかわからないような暗号の返事が届き、ウエルズ医師は有望な相手のもとに実際に赴いて、ひとりひとり確認していきます。癇癪持ちのエルシーという少女は精神病院に収容されていましたが、図書館の書籍をとてつもない速度ですべて読破してしまったといいます。主治医のフォクスウェル医師は柔軟な考えの持ち主で、ウエルズ医師の話に納得し、エルシーをミス・ペイジに預けることを承知します。
その間に、ティモシーは祖母に働きかけ、祖母夫婦の土地に天才児のための学校を建設することを承知させていました。設計は新進の高名な建築家ポール・T・ローレンス(実はティモシーのペンネームのひとつ)が担当し、計画はすぐに実現に向けて動き出します。フォクスウェル医師も全面的に協力し、ミス・ペイジも教師として赴任することになります。
エルシーに続いて、同じ爆発事故の被曝者から生まれた天才児たちが次々と発見され、学校に集まってきます。盲目の歴史学者と言語学者に養われている(実際には逆の立場なのですが)少年ジェイ、子だくさんの養父母のもとで完全に浮いた存在になっていた少女ステラ、内気で引っ込み思案のベス、科学実験に熱中しているフレッド――。彼らはいずれも、ティモシーと同じように別名で一流の詩人、伝記作者、評論家、漫画家として世に知れていましたが、天才にありがちな問題も抱えていました。考え方が偏っていたり、すぐに癇癪を起したり、他人に対する思いやりがなかったり――しかし、児童心理を熟知しているウエルズ医師やフォクスウェル医師、ミス・ペイジによる適切なアドバイスや、最初にそれを克服したティモシーのリーダーシップなどを通じて、大きな問題にならないうちに抑えることができました。
しかし、この特殊な学校に対して、世間では根拠のない憶測がささやかれ、ついには、さる似非テレビ宗教家が「原子力によって生み出された悪魔の巣窟」として番組で非難し、これを信じた地元民たちが暴徒となって押し寄せてきます。ティモシーとウエルズ医師の機転により、危機は回避されますが、これをきっかけにティモシーは自分たちが周囲の世界と共存するには何をするのが良いのかを考え、ある決断を下すのでした……。

オススメ度:☆☆☆☆




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