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zoom RSS 海神の裔 ☆☆☆

<<   作成日時 : 2017/06/13 21:27   >>

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(海神の裔 / 豊田 有恒 / 集英社文庫 1985)

豊田さん十八番の、日本古代史をテーマにした短篇9作品を収めた短篇集です。
これよりやや早い時期に、すでに「倭王の末裔」、「持統四年の諜者」、「倭の女王・卑弥呼」、「親魏倭王・卑弥呼」といった作品が書かれており(いずれも十代の頃に読んでいます)、この時期の一連の古代史小説の掉尾を飾る作品集かもしれません。ストーリーよりも、作中で展開される、日韓中を中心とした東アジア文化圏の歴史を大局から客観的に眺めた時代解釈(「逆説の日本史」の先駆と言っていいかもしれません)は、斬新で説得力があり、快い知的興奮を味わわせてくれます。
また、収録された短篇のいくつかは、後に長篇化されて「崇峻天皇暗殺事件」、「大友の皇子東下り」などの作品になっているのだと思います。

「海神の裔」:自殺した双子の兄が遺した言葉を手掛かりに、八城栄二はおのれの出生の秘密を求めて対馬へ赴きます。海幸彦・山幸彦伝説が残る神社の浜で、地元の娘・佐比子と運命的に結ばれた栄二は、やがて自分の一族の呪われた歴史を知ることになります。

「熊野伝説」:熊野地方を旅行中のテレビディレクターは、温泉地で出会った娘・聖優子に、自分を連れて逃げてくれと訴えられます。優子は、徐福の子孫が暮らしていると言われる閉鎖的な村から逃れようとしていました。追ってきた村人は、超能力を使って二人の逃走を妨げようとします。

「邪馬台国最後の日」:女王・卑弥呼の統治のもと、九州北部一帯を支配してきた邪馬台国ですが、卑弥呼の死後、孫娘に当たる台与が十代で女王の座を継いだころには、山岳民族からなる狗奴国の度重なる侵略を受けていました。次第に劣勢に立つ邪馬台国の人々は、ついに九州の地を捨て、船団を組んで未知の土地へ向かうのでした。「邪馬台国はどこにあったか」という論争にあっさりと答を出した作者の論理は痛快です(^^

「近江京脱出」:大伴氏に仕える渡来人、黄書の大伴は、愛人の鹿深子から、天智天皇の病が重篤なことを聞かされます。天皇が亡くなれば、天皇の息子である大友の皇子が、跡継ぎの座を狙って天皇の弟である大海人の皇子の命を狙ってくることは必至で、大海人の皇子に仕える大伴氏も危うくなります。慎重派で臆病な大海人の皇子は、黄書の大伴から知らせを受けると、先手を打って近江京を脱出し、吉野へ向かうのでした。――この続きは、巻末の「大友の皇子、都落ち」にて。

「倭王の伝説」:豊聡耳の王子は、若干19歳にして、その知識と聡明さで知られていました。しかし、母と兄との親子相姦の現場を目撃し、大叔父に当たる蘇我の馬子に相談しますが、はぐらかされてしまいます。さらに、妃の刀自子が信頼していた下男の駒と駆け落ちし、信頼していた叔母が大叔父と密通していたことを知り、崇峻天皇が暗殺される現場を目撃するなど、ショッキングな出来事が続いて、大きなトラウマが心に刻まれてしまいます。そのトラウマは、彼が成長し、推古帝の摂政となってからの行動にも暗い影を落としていました。

「SF織田信長」:安土城址の近くをドライブ中、落雷の直撃を受けた語り手は、織田信長の生きていた時代にタイムスリップしてしまいます。そればかりか、そこは本能寺の変が失敗に終わり、信長が天下を取ったパラレルワールドでした。

「メトセラの裔」:八百比丘尼伝説や浦島太郎説話に関心を持ち、ゆかりの地を旅していた語り手は、「丹後風土記」に記された最古の浦島伝説と言われる“浦の嶼子”のエピソードが、宇宙旅行による相対論的効果を描いているとしか解釈できないことに気付きます。

「入鹿暗殺」:歴史上は“悪役”である蘇我入鹿の視点から、大化の改新と、その歴史的背景が描かれます。

「大友の皇子、都落ち」:壬申の乱で大海人の皇子に敗れた大友の皇子は、数少ない腹心の家来に守られて、東国へ落ち延びようとします。史書によれば、大友の皇子は山前の地で死んだことになっていますが、関東の地には大友の皇子に関係があるとしか思えない地名や史跡が数多く残っているそうです……。

オススメ度:☆☆☆




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