イクシーの書庫

アクセスカウンタ

zoom RSS カーテン ☆☆☆

<<   作成日時 : 2013/11/21 18:27   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

(カーテン / アガサ・クリスティ / ハヤカワ・ミステリ文庫 2001)

副題が「ポアロ最後の事件」となっているように、かのエルキュール・ポアロが舞台から退場することになる有名な作品です。出版されたのはクリスティが亡くなる前年の1975年ですが、実際に書かれたのは1942年のことで、ミス・マープルものの「スリーピング・マーダー」とともに、クリスティは自分の死後に出版されるように計画していたのだといいます。

舞台となるのは、ポアロが初めて登場した、あのスタイルズ荘。愛妻と死に別れ、悄然としてアルゼンチンから故郷のイギリスに戻ってきたヘイスティングズ元大尉は、旧友エルキュール・ポアロから手紙を受け取り、懐かしのスタイルズ荘へ赴きます。スタイルズ荘は、今は高級下宿になっており、関節炎で足腰が立たなくなったポアロは、ここで静養していました。しかし、再会したポアロはヘイスティングズに驚くべき話を聞かせます。
過去に近郊で発生した、5つの殺人事件――いずれも犯人や動機、手段がはっきりしており、手を下した犯人は捕えられて事件は問題なく解決しています。しかし、ポアロが言うには、これらの事件の背後には真犯人が存在しており、仮に「X」と呼ぶ真犯人が、このスタイルズ荘の滞在客の中にいて、新たな事件を引き起こそうとしているのです。ところが、「X]とは誰か尋ねても、ポアロは名前を言おうとしません。お人好しでバカ正直な(笑)ヘイスティングズが名前を知ったら、すぐに顔に出してしまい、「X」に悟られてしまうというわけです。そんなことはない、と憤然とするヘイスティングズですが、これまで様々な作品で彼と付き合ってきた読者から見れば、「そんなことはある」のは一目瞭然(^^;
車椅子でしか移動できないポアロ(しかも、なぜかポアロは数十年来の忠実な従僕であるジョージに暇を取らせ、鈍重で頭が鈍い大男カーティスを従者にしています)の目と耳となって、ヘイスティングズはスタイルズ荘の滞在客を注視し始めます。
現在の経営者は、退役軍人ジョージと妻デイジーのラトレル夫妻――お人好しで商才のないジョージは、宿を切り盛りするデイジーに常に尻に敷かれ、罵声を浴びせられても寂しく笑っているだけでした。著名な熱帯医学者のジョン・フランクリンは、病弱な妻バーバラとともに滞在していますが、熱帯地方の毒豆の研究に余念がなく、できればアフリカへ行って実地に研究したいと考えています。妻バーバラは、自分の身体のせいで夫は自由な研究ができないと悩み、自己憐憫に陥ったかと思えば付き添いのクレイヴン看護婦に当り散らしたりします。若く器量よしで、てきぱきとした有能なクレイヴン看護婦は、如才なく職務を遂行していました。そして、ヘイスティングズの末娘ジュディスが、フランクリンの助手として献身的に研究に協力しています。スティーヴン・ノートンは、バードウォッチングが趣味の目立たない独身中年男ですが、空気が読めずに失言をしては、場の空気を凍り付かせる名人でした。インド帰りの資産家ウィリアム・キャリントンは恰幅のいい話好きの熟年男性で、ヘイスティングズの目には頼りになる人物と映りますが、口が軽く、他人から聞いた話を自分の体験談として平気で話す癖がありました。アラートン青年は、絵に描いたような軽薄な女たらしで、若い女性と見れば誰かれなく口説いているため、ヘイスティングズは娘ジュディスの身が心配で仕方がありません(もっとも、進歩的な21歳のジュディスに言わせれば、「わたしは自分の始末ぐらい自分でつけられます。お父様は口出ししないで!」となるのですが)。もうひとり、エリザベス・コールは、どこか陰のある30代の独身女性ですが、やがて彼女はポアロが言っていた5つの殺人事件の犯人のひとりの妹だということが明らかになります。
ヘイスティングズは、例によって(笑)自信満々に見当違いの推理をし、失言を繰り返し、抜群のワトスン役を演じていくのですが、やがて事件(事故?)が起こります。宿泊客に酒をおごる、おごらないでラトレル夫妻が激しく口論した(というか、デイジーが一方的にジョージを口撃したわけですが)直後、ベランダで話をしていたジョージがウサギを見つけた、といって猟銃を発射します。しかし、草の斜面にいたのは妻のデイジーでした。幸い、弾は急所を外れ、デイジーは一命を取りとめますが、もしデイジーが死んでいたら、ポアロの言う「第6の殺人事件」になりかねないところでした。一方、ジュディスがアラートンと親密な様子を見せつけられたヘイスティングズは、「あの男と付き合うな」と娘を叱りますが、ジュディスは「私は彼を深く愛しているの」と取り合いません(ちなみに、この部分のミスディレクションは、少し鋭い読者なら、すぐに気が付きます。気付かないのはヘイスティングズと、ヘイスティングズ並みの頭脳の持ち主だけ(^^;)。結果、思いつめたヘイスティングズは、アラートンを毒殺しようとまで考えるのですが、ポアロの機転で、危ういところで殺人犯になるのを免れます。
事件は続き、今度はフランクリンの妻バーバラが、自分が淹れたコーヒーを飲んで死亡します。コーヒーからは、夫ジョンが研究していた熱帯産の豆の毒成分が検出されます。これで、心置きなくアフリカへ研究に行ける、とつぶやくフランクリンや、世の中の邪魔者になっている人間は価値がないのだから、取り除いても構わない、と主張するジュディスの態度に、ヘイスティングズは心穏やかではありません。まさかジュディスが――?
ノートンが、以前にバードウォッチングの双眼鏡で何かを目撃したものの、口をつぐんでいることを聞いたポアロは、ノートンに何を話すなと忠告するため、部屋に呼び入れます。しかし、またも新たな死が……。
ポアロがおのれを死を賭してヘイスティングズに告げようとした真相とは――。

同時代に活躍した某有名ミステリ作家の、某名探偵の退場と似たパターンですが、まあポアロらしいと言えば、ポアロらしいでしょう。そして結局、ヘイスティングズは、最後までヘイスティングズでした。

オススメ度:☆☆☆





カーテン―ポアロ最後の事件 (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-69)
早川書房
アガサ・クリスティー

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by カーテン―ポアロ最後の事件 (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-69) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
カーテン ☆☆☆ イクシーの書庫/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる