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zoom RSS 陀吉尼の紡ぐ糸

<<   作成日時 : 2007/09/14 18:49   >>

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陀吉尼の紡ぐ糸―探偵SUZAKUシリーズ〈1〉 (徳間文庫) / 藤木 稟 / 徳間文庫 2000)

戦前の吉原を舞台に、盲目の美青年・朱雀十五が探偵役を務める伝奇ミステリ『探偵SUZAKUシリーズ』の第1巻です。
プロローグ(この巻のプロローグであるとともに、シリーズ全体のプロローグでもあるようです)は明治29年。吉原のはずれにある“花魁弁才天”の境内で、夜中に高等学校の青年たちが百物語に興じています。藤原巧は、花魁弁才天で起きた“神隠し”の話をしますが、植木屋と幼児と幼女が失踪した事件は実際に起きたことで、唯一助かった双子の弟がなんと藤原自身だというのでした。後に藤原は日本の軍需産業を牛耳る藤原鉄鋼の創業者となり、同席していた東泰治は陸軍少佐として特殊任務につくことになります。
時は流れて昭和9年。花魁弁才天を散歩していた沼田は、弁財天の脇で死んでいる老人を目撃します。白髪の老人は、背中を向けているのに顔はこちらを向いているという異様な格好で、しかも右手を上げて沼田を差し招いたといいます。しかし、通報を受けた警察が駆けつけたとき、死体は神隠しにあったかのように消え去っていました。取材に来た朝日新聞社の記者・柏木は、現場で関西弁を話す珍妙な男に出会いますが、この男は大本教の幹部・出口王仁三郎でした。
沼田の証言から、被害者(遺体は消えていても殺人の証拠は残っていた)は藤原鉄鋼の社長、藤原隆(巧の息子)と判明します。しかし、現場を訪れた陸軍の東少佐によって、事件は特高の管轄となり、もめごとを起こした柏木は社会面担当から花柳界担当に飛ばされてしまいます。
先輩記者・本郷の助言に従って、吉原の顔役へ挨拶に出かけた柏木は、吉原の自警団・車組の顔役を務める朱雀十五と知り合います。1年前まで辣腕検事だったという朱雀は、失明したために検事を辞め、吉原に職を得ていたのです。謎めいた朱雀の言動に、一本気な柏木は翻弄されてしまいますが、なぜか朱雀は柏木を気に入ったようでした。
一方、新聞社には中村茅と名乗る金沢の女性から、弁財天で殺されたのは藤原社長ではなく自分の夫・中村正志だという訴えが入ります。本郷に同行して、上京してきた茅と会った柏木は、茅が2年前に海に落ちて死んだ兄の不倫相手・美佐に似ているのに驚き、惹かれるのを感じます。
茅のためにも事件の真相を解明したいと考えた柏木は、調査を始めますが、彼の身にも異変が――。そして朱雀も神隠しに遭ったかのように行方をくらませてしまいます。
最初に聞いたこのシリーズの評判は、「純粋ホラーのようなのに、すべて論理的解決がある」というものでした。たしかに、真言立川流の食人肉神・陀吉尼(荼吉尼の方がポピュラー?)による神隠し、歳を取らない怪僧、柏木の見る夢の暗合など、ホラーの道具立ては満載で、純粋ホラーにもできる物語を、作者はあえて論理的解決に導いています。異界に連れ去られるよりも恐ろしいのは、現実が戦争という“異界”へ雪崩れ込んでいくのを止められない歴史の流れ――ということでしょうか。
次巻以降に期待大です。

オススメ度:☆☆☆
陀吉尼の紡ぐ糸―探偵SUZAKUシリーズ〈1〉 (徳間文庫)

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